【リニア】「2037年までに」が一転「なるべく早く解決」と話した知事…”部分開業論”は期成同盟会でも主張へ

年始の会見で、リニア問題は「2037年までに解決すればいい」と話していた静岡・川勝知事ですが、15日の会見では一転「なるべく早く解決」すると話しました。一方で、自身が唱える「部分開業論」については、期成同盟会でも主張する考えを示しました。

15日、神奈川・川崎市では地下90メートルの深さにあるトンネル掘削工事の現場が初公開されました。

公開された第一首都圏トンネルは、品川から神奈川・相模原市に作られる駅までの約37キロを結ぶもので、9月から本格的な掘削に乗り出すということです。

沿線ではリニア新幹線の工事が着々と進んでいますが…大井川の水や南アルプスの環境への影響が懸念されることから、静岡工区では未だ着工の見通しが立っていません。

JR東海は2023年12月に、リニア新幹線の開業時期をこれまでの「2027年」から「2027年以降」に変更する申請を国交省に提出し認可されました。

これを受けて1月4日の会見で川勝知事は、全線開業予定の「2037年までに問題を解決すればいい」と話しました。

(川勝知事)

「2027年という数字が実質消えたので2037年までに東京から大阪まで全線開通と。これが残された最後の期限ということになると思います。南アルプスの自然・生態系を保全することとリニアの両立という件についても、2037年までに解決すればいいと私は受け止めています」

これに対し、静岡市の難波市長は「開業時期とリニア問題解決は、別問題」として「解決の先延ばしは、行政責任者としてありえない 」と批判しました。

(静岡市 難波市長)

「開業時期の問題と行政手続きをどのくらいの期間でやるのかは別問題、速やかに解決しないといけない。初めから行政手続きに対する判断を10年先でもいいとするのは行政の責任者としてありえない」

15日の会見で、改めて”リニア問題解決の時期”についての認識を問われた川勝知事は…

(川勝知事)

「(南アルプスの)環境を守るために何ができるか。専門部会や有識者会議で議論してきた。可及的速やかにやらなければいけない」「遅くしろということではない。しっかりとやればいい、2037年までになるべく早く解決すればいい」

「2037年“までに”解決すればいい」という姿勢から一転「なるべく早く解決」と話しました。また、リニア問題の解決策として「神奈川ー山梨間などを先に開業する」という”部分開業論”について、沿線自治体でつくる「期成同盟会」でも主張する考えを示しました。

(川勝知事)

記者)期成同盟会の中でも考えは主張する?

「(期成同盟会でも)主張する人がいると思うので、全体の意思が反映されなくてはいけない。できるところからやっていく以外に促進する方法は無いと思っている。早期にリニアを全線開通に向けて促進するように動いているのが期成同盟会。趣旨に則した発言をしたいと思います」

「部分開業に賛同してくれる沿線自治体がある」と自信を見せる川勝知事。開業が遅れる原因となっている静岡工区の問題を飛び越えて、持論を展開し続ける言動は、議論を呼ぶことになりそうです。

(スタジオ解説)

リニア問題について整理すると現在静岡県とJR東海が議論しているのは、

①リニア工事に伴う大井川の「水問題」と

②工事のよる動植物の影響や残土置き場など「南アルプスの環境保全」に関する議論で、“開業”については一切議論されていません。

こうした中で、川勝知事が「神奈川ー山梨間などを先行的に開業する」いわゆる”部分開業論”を持ち出したことで混乱を招いています。

知事は15日の会見でも「期成同盟会でも主張する人がいると思う。できるところから開業した方がいい」と話していますが、そもそも“部分開業”は静岡工区とは直接関係がなく、“開業”については事業者のJR東海が決めることです。

2023年12月、静岡市の難波市長はこの部分開業論について「静岡県には関係ない。知事が口を出す話ではない」と厳しく批判するなど、外部からは知事の言動を疑問視する声が相次いでいます。

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