東京都が所得制限撤廃で【高校の授業料無償化】3年間でどれくらい負担が変わる?

2023年の年末に子育て世帯には、嬉しいニュースが入ってきました。東京都は、2024年度から都内在住の高校生を対象に国公立私立を問わず、すべての高校の授業料を実質無償化するとのこと。そこで今回は、東京都が実施する高校の授業料無償化の概要と無償化により私立高校に通った場合、3年間でどれくらいお得になるのかについて解説します。


国が支援する「高等学校等就学支援金制度」とは

そもそも高校などの授業料を支援する制度には、国が支援している「高等学校等就学支援金制度」があります。この制度は、国公立私立を問わず、日本国内に住所を有する高等学校等に通う一定要件を満たす世帯の生徒に対して、支援金を支給する制度です。

支給要件の中には「保護者の所得要件」があり、一定以上の所得がある場合には、就学支援金の受給対象から外れ、授業料は家庭の全額負担になります。

所得要件は保護者等の「課税所得」が基準になります。課税所得は、税金の課税の基となる所得です。以下の計算式により計算した金額が30万4,200円未満の世帯の生徒を対象に支給されます。

●保護者の市町村税の課税標準額×6%―市町村民税の調整控除の額=30万4,200円未満

実際の支給額は、通っている高校や世帯収入により変わります。

・公立高校の支給額
全日制の国立・公立高等学校等に通う生徒には、世帯年収が910万円未満であれば、年間11万8,800円(月額9,900円)を上限に支給されます。国公立高等学校の授業料は、年額11万8,800円のため、実質の授業料はかかりません。

・私立高校の支給額
私立高校に通う生徒には、収入に応じて支給額が変わります。世帯年収が910万円未満であれば、年間11万8,800円を上限に支給されます。世帯年収が590万円未満であれば、年間39万6,000円を上限に支給されます。

ただし、公立、私立ともに、支給されるのはあくまでも授業料です。授業料以外の費用については、家庭の全額負担になります。また、実際の所得制限の水準は、家族構成によって異なります。共働き夫婦の場合は、2人の収入の合算額で判断されます。下記の図表を参考にしてください。

また、東京都では、上記の国の就学支援金に加えて、生徒と保護者が都内在住であることを条件に東京都独自の助成制度「私立高等学校等授業料軽減助成金」があります。これにより、国の就学支援金と合わせて、私立高校の授業料が最大47万5,000円まで支援されます。ただし、現行の制度には所得要件があり、保護者の年収目安910万円未満の世帯までが授業料の無償化の対象となっています。

所得制限なしで都内の高校の授業料が無償化に

2024年度から東京都では、所得制限の撤廃を行い、都内在住の高校生を対象に国公立私立を問わず、すべての高校の授業料を実質無償化するとのこと。

東京都によると、高校の年間の授業料は、都立高校が約12万円、私立高校は平均48万円程度。最近は、物価高の影響もあり、高所得世帯といっても、以前よりも家計に余裕がないケースが少なくないと思うので、所得制限の撤廃は、嬉しいニュースですね。

ところで、東京都に住んでいても、子どもが神奈川県や埼玉県などの近隣の県の高校に通っているご家庭も少なくないのではないでしょうか。その場合は、支援金がもらえるのかどうか気になるところですね。

東京都の場合、支援金は、東京都在住の高校生を対象に給付されるので、東京都以外の高校に通っていても支援金は支給されますので、安心してくださいね。例えば、神奈川県のように、県内に在住かつ、県内の学校に通う場合のみ対象となっているケースもあるので、お住まいの自治体に確認するようにしましょう。

私立高校に通う場合、3年間で約143万円がお得に

今回の東京都の発表を受けて、街の声を聞いていると、これまで所得制限で恩恵を受けられなかった世帯の方たちから、私立高校への進学を前向きに検討したいという声が多く聞かれます。

では、実際に私立高校に通った場合、3年間でどれくらいの費用がお得になるのでしょうか?

私立高校の授業料については、どこの高校に進学するのかによって違ってきますが、文部科学省令和4年度私立高等学校等初年度授業料等の調査結果を見ると、私立高校(全日制)の学費は入学金16万4,196円、授業料は44万5,174円、施設整備費等14万9,510円で合計75万8,880円となっています。この他、令和3年文部科学省子どもの学習費調査の結果を見ると、学習塾や習い事などの学校外活動費が30万4,082円かかっています。学校外活動費を含めると、3年間の学費は約286万円(入学金は初年度のみとして計算)になります。

これまでお話してきた私立高校授業料無償化の制度を利用すると、支援金の金額は、年間47万5,000円。3年間で142万5,000円支給されることになります。上記の学費286万円から142万5,000円を差し引くと実質負担は143万5,000円となります。所得制限を超えたご家庭では、これまでよりも半分程度学費が減ることになります。

今回は、東京都が打ち出した政策ですが、高校授業料無償化の波は他の自治体にも波及するのでしょうか?

大阪府では、2024年度に府内在住で府内の私立高校や府外でも、府の制度に参加すると表明した高校は無償化になる予定。大阪府も保護者の所得制限は撤廃されるようです。今後は他の県や自治体が追従してくる可能性が高いですが、財源によって、完全無償化ができるかできないか、格差が広がりそうです。どこにいても平等に教育の機会が与えられるよう、国には少子化対策に本腰を入れて取り組んでいただきたいと思います。

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