[社説]廃棄物残存 国が認識 支障除去のやり直しを

 あまりにも拙速で、ずさんと言わざるを得ない。

 国頭、東、大宜味の3村にまたがる米軍北部訓練場の一部返還で、防衛省が廃棄物の残存を認識しながら「支障除去作業を終えた」として、地権者に土地を引き渡していたことが分かった。

 そもそも返還された約4千ヘクタールのうち、ヘリパッドやその周辺、道路、過去のヘリコプター墜落地点など5ヘクタールでしか支障除去作業を実施していない。その範囲でも作業終了後に、鉄板や防護壁などの廃棄物が見つかっている。

 環境調査団体が県への情報開示請求で入手した2017年6月の資料で、防衛省が引き渡し予定地での廃棄物の残存を認識していたことが裏付けられた。さらにその時点では「撤去しない」と県側に伝えていたことも判明した。

 約4千ヘクタールは16年12月に日本側へ返還。防衛省は支障除去を担い、17年12月に土地を引き渡した。その間の17年10月に返還跡地を含む「やんばる地域」の世界自然遺産登録に向け、国際自然保護連合(IUCN)の視察があった。

 環境調査団体は「世界自然遺産登録への影響を恐れて公表しなかった」と指摘する。

 防衛省は、鉄板などが残っていることを土地の引き渡し後に公表し、現在は「除去を完了した」と説明するが、不都合な事実を隠していたのではないか。

 これまでも県内では、返還跡地から有害物質を含む廃棄物などが発見されている。「支障除去」の実効性に疑いの目が向くのも無理はない。

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 北部訓練場で返還された土地の大部分は、林野庁の所有だ。国から国への引き渡しという関係から「廃棄物撤去は後回し」とあいまいになった可能性もある。

 開示された資料では、防衛省から県へ現地の状況を報告していたことが読み取れる。県側は「鉄板などの運搬は困難」とする防衛省に対し「切断するなどやりようはあるはず」と、もっともな意見を伝えている。一方で、IUCNの現地視察の日程を気にする発言も記録されている。

 結果的に県も、引き渡し段階で廃棄物が残存している事実を公表しなかった。

 県は、返還予定地で環境汚染が確認された場合、原状回復計画の策定と必要な措置の実施を日米両政府に義務付けるよう日米地位協定の改定を求める立場である。

 にもかかわらず、廃棄物が残ることを知りながら追及しなかったのは黙認と受け取られかねない。誰がどう判断したのか、説明責任がある。

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 北部訓練場は1957年に接収され、ゲリラ戦やサバイバル訓練に使われてきた。広大な森林を歩くのに身を軽くしようと、携帯食のごみや空包や薬きょうなどがわざと捨てられることもある。引き渡しから6年が過ぎた今も廃棄物は次々に見つかっている。

 防衛省は米軍から使用実態を聞き取るとともに、支障除去の範囲を返還跡地全体に広げ、やり直すべきだ。

 米軍の廃棄物が残っている状態では自然環境を守れず、世界自然遺産と胸を張ることもできない。

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