元役者の新たな舞台 長崎マリオットホテルで非日常を演出するフロント担当橋本航さん

フロントで宿泊客を迎える橋本さん=長崎市尾上町、長崎マリオットホテル

 16日開業した長崎マリオットホテルのフロントでは、橋本航(わたる)さん(31)=長崎市出身=が笑顔で丁寧に宿泊客を迎えていた。もともとは東京で役者をしていたが、昨年10月にUターン就職。「100年に1度のまちづくりが進む長崎をさらに盛り上げたい」と熱っぽく語る。
 長崎南山高を卒業後、神奈川県の大学に進学。長崎を舞台にしたNHK大河ドラマ「龍馬伝」の放送を見て「自分も表現者になりたい」と演劇部に入り、役者への道を歩み始めた。
 都内の物流会社に就職したものの役者の夢をあきらめきれず、25歳で退職。アルバイトをしながら芸能事務所に所属したり、フリーで活動したりして舞台やウェブCMなどに出演。雑誌のモデルも経験した。
 カプセルホテルでアルバイトをしていた時、同僚だったカナダ人女性と結婚。子どもも生まれ、安定した職に就こうと思っていると、古里の父親から「新しいホテル(長崎マリオットホテル)ができるらしい」と聞いた。もともと「役者は30歳まで」と決め、地元に貢献できる仕事をしたかったため、すぐに応募。長崎を活気づけたいという熱い思いや明るい性格を評価されて内定を獲得し、家族3人で帰郷した。
 インバウンド(訪日客)に英語で接客できる妻も、同ホテルに就職。VIPに対応するゲストエクスペリエンスとして、上級会員と上級客室の宿泊者のみが利用できる専用ラウンジ「M CLUB」を任されている。
 橋本さんは日々の研修でホテルマンとしてのマナーや世界基準のルールを身に付けた。海に接した景色が人気の千綿駅(東彼東彼杵町)や長崎原爆資料館を巡り、学んだことを社員同士でプレゼンテーションを行った。「県内出身でも歴史や文化など知らないことが多く、魅力を再発見できた」と話す。
 妻と同じゲストエクスペリエンスの業務も担う予定だ。「役者からの転身だが、お客さまを楽しませるのはホテルも舞台と同じ。(自分の)エンターテインメント性を生かして非日常を演出していきたい」。人生の新たなステージが幕を開けた。

© 株式会社長崎新聞社