大久保被告、SNSで「犯行計画のやり取り」消去するよう何度も指示 ALS嘱託殺人裁判

京都地裁

 難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患う女性から依頼され、薬物を投与して殺害したとして、嘱託殺人などの罪に問われた医師の大久保愉一(よしかず)被告(45)の裁判員裁判の第3回公判が17日、京都地裁(川上宏裁判長)であった。検察側の証拠調べで、被告が女性と交わした交流サイト(SNS)のメッセージの内容が読み上げられ、犯行計画のやりとりを消去するよう何度も指示していたことが明かされた。

 検察側によると、大久保被告は事件約1年前の2018年12月、ツイッター(現X)で女性とつながり、その後、非公開のダイレクトメッセージ(DM)を使って連絡を取るようになった。「安楽死」を望む女性に対し、被告は「苦痛が少しでも早く取り除けるようお手伝いできれば」などと持ちかけていた。

 やりとりの中で、ヘルパーが不在になる時間帯や、容体急変時の取り決めを尋ねるなどし、発覚しないように念入りに計画。「メールやDMのやりとりは消していただければ」と繰り返し伝えていたことも明らかになった。

 またこの日は、女性の主治医だった男性が証人として出廷した。事件前日に診察した女性の様子について、「病状は安定しており、死期が迫った状態ではなかった」と証言した。

 女性が胃ろうによる栄養摂取の中止を求めた上で、「人として尊厳のない毎日から救ってほしい」などと口にしていたとも述べた。一方、外出がかなわなくなった後も、ヘルパーとの会話を楽しむなどして過ごしていたと振り返った。

 11日に開かれた初公判では、大久保被告は、嘱託殺人罪について「女性の願いをかなえるために行った」と述べた。弁護側は、自己決定権を保障した憲法に違反するとして、無罪を主張している。

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