【ミャンマー】ミャンマー産ガス、23年にタイ輸出量2割減[資源]

ミャンマーからタイへの天然ガス輸出量が昨年、1日当たり平均で前年から約2割減少したもようだ。タイのエネルギー当局が発表した1~11月の実績は22年ぶりに日量6億立方フィートを割り込んだ。2015年の9億立方フィート超を直近のピークに減少基調となっており、タイでは他国からの液化天然ガス(LNG)調達への切り替えが進んでいる。

タイはミャンマー南部沖合の三つのガス田「ヤダナ」「イェタグン」「ゾーティカ」からパイプラインを通じて天然ガスを輸入している。タイ・エネルギー省エネルギー政策事務局(EPPO)が公表した2023年1~11月の1日当たり輸入量はそれぞれ、33.6%減の2億8,900万立方フィート、19.8%増の3,200万立方フィート、3.1%増の2億3,800万立方フィートだった。

昨年は調達が増えたイェタグンだが、枯渇が近いとされ、近年は輸入減が著しい。国軍による21年2月のクーデターを受けたガス事業への批判もあり、事業主体のマレーシア国営石油ペトロナスや参画していた日系企業連合が撤退を表明した。

昨年大きく落ち込んだのは、ガス田別でタイ輸出量が最大のヤダナだ。1990年代末に生産・輸出が始まり、2002年以降は年平均で日量4億立方フィートを下回ったことがなかったが、23年に入って急減した。ヤダナの権益については、4割以上を握っていた米シェブロンが昨年、カナダのMTIエナジーの子会社に譲渡すると表明している。

14年からガス生産・タイ輸出が始まったゾーティカからの輸出は安定的に推移している。同ガス田の権益の80%は、タイ国営PTT傘下の探鉱・開発会社PTTエクスプロレーション・アンド・プロダクション(PTTEP)が握る。

一方、タイでは23年1~11月のLNG輸入量が56.0%増の日量14億8,300万立方フィートと急拡大した。

■タイのガス輸入額で3位転落

ミャンマーは10年まで、タイにとって唯一のガス調達先だったが、同国は11年に東南アジア諸国連合(ASEAN)で初めてLNGの受け入れ基地を設置。調達先の多様化を加速させ、民間企業によるLNG輸入を自由化した20年には、各国からの輸入量がミャンマー産ガスを上回った。

タイ商務省によると、同国の23年1~11月の天然ガス輸入額(LNG含む)は前年同期比10.9%減の106億6,000万米ドル(約1兆5,600億円)。ロシアのウクライナ侵攻などで22年に高騰していた国際的なガス価格が落ち着いたことなどが影響し、減少した。

調達先別では、22年まで首位だったミャンマーが3位に転落。一方、オーストラリア産が2桁増えて3位から首位に浮上し、カタール産は5.5%増えて2位を維持した。以下、マレーシア、米国、オマーンなどと続いた。

米国は昨年、ミャンマーでガス関連事業を展開する石油ガス公社(MOGE)との金融取引を制裁対象に加えた。発効は23年12月15日。MOGEとの取引を続けるタイ企業などへのけん制とされている。

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