〈1.1大震災〉「想定外」の避難者続出 立山町、富山市民に場所開放 射水市、道路も庁舎も大混雑

立山町が開設した避難所。富山市民も多く身を寄せた=1日、町元気交流ステーション(町提供)

  ●元日津波警報で

 富山県を観測史上最大の震度5強の揺れが襲った能登半島地震では、自治体にとって想定外の事態が起きた。津波警報が発令される中、富山市沿岸部の住民が海のない立山町に殺到し、同町は急きょ避難所を開設して受け入れた。舟橋貴之町長は今後、町外からの避難者対応を想定するとした一方、富山市側で市民の安否確認が難航する可能性があるとし、県の主導で自治体間の情報共有を進めるよう求めている。

 立山町によると、発災直後の1日午後4時50分ごろから、元日で閉まっていた町役場や付近の施設「町元気交流ステーション」、高台の町総合公園駐車場に避難者が集まっているとの情報が相次いで町災害対策本部に入った。

 この時点で町内に大きな被害は確認されておらず、対策本部長を務める舟橋町長も疑問に思ったが、急きょ午後5時に交流ステーションを避難所として開放し、毛布などの防災用品を提供するよう指示した。聞き取り調査の結果、避難者の多くは富山市民で、特に水橋など海に面した地域の住民だと判明した。

 舟橋町長は「津波のニュースを見て上へ上へと来たのだろう」と、海抜の高い場所に避難する心理を推し量った。

  ●立山駅に外国人客

 町内では、立山黒部アルペンルートと富山地方鉄道立山線の立山駅(標高475メートル)付近にも外国人客約80人がおり、町が毛布などを提供した。アルペンルートの今季営業は終了していたが、スキーのため訪れ、立山線が地震で運休して取り残されていたという。

 町は今後、津波警報が発令されれば町長の指示を待たず交流ステーションに避難所を開設する。舟橋町長は「海に面していなくても、町外からの避難者に対応できるようにしておかなければならない」と強調した。

 一方、避難が長期化した場合、避難者の地元である富山市側で安否確認が難しくなるリスクがあったと指摘。マイナンバーカードを活用して避難者の情報を把握するシステムを挙げて「県の主導で広域で普及させてほしい」とした。

 富山市防災危機管理課の担当者は、市民が立山町に避難していた事案は把握していなかったとし、「最寄りの避難所でも高台でも、どこでもいいので、まず身の安全を確保してほしい。緊急時には市外への避難も否定はできない」と話した。

  ●太閤山にも人

 射水市では海岸部の新湊地区から小杉、大島、大門地区への避難者が多く、道路が渋滞した。海岸から約6キロ離れた市役所本庁舎は避難所ではなかったが約1100人が詰め掛け、開放された会議室では足りず廊下に人があふれた。市職員が食料などを配った。

 小杉地区の太閤山方面にあるコストコ駐車場(上野)にも多くの人が集まった。新湊地区内でも海から離れた市民病院には約650人が身を寄せ、避難者の二上克己さん(75)=立町=は「海から離れようとしたが大渋滞で大変だった。大きな津波が来ていたら危なかった」と語った。

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