〈1.1大震災~連載ルポ〉能登牛に「命の水」空輸作戦 孤立牧場、ドローン40往復

ドローンで牧場に水を運ぶNPO法人のメンバー=17日午後1時半、能登町当目

  ●埼玉から助っ人 「ブランド守らんなん」

 能登半島地震で孤立しているのは、集落だけではない。能登町の山あいにある牧場では、土砂崩れで道路が通れないため、100頭の能登牛(のとうし)が孤立しており、断水の影響で、ほとんど飲まず食わずだという。17日、歩いて牧場を訪ねると、石川県産ブランド牛を守るため、ドローンによる「命の水」の空輸作戦が行われていた。(経済部・室屋祐太)

 能登牛が孤立しているのは、能登町当目の「柳田肉用牛生産組合」。牧場に通じる道路は土砂崩れで車が通れず、復旧もままならない。組合長の駒寄正俊さん(70)によると、牛に飲ませたり、餌に混ぜたりするのにかなりの量の水が必要となるが、1日の地震発生以降、断水が続いている。

 駒寄さんは地震後、徒歩で何度か牧場を訪れ、積もった雪を溶かして水を確保してきたが、限界が近づいている。みるみる痩せていく牛の姿に心配を募らせ、町に相談したところ、埼玉県のNPO法人「市民航空災害支援センター」がドローンで水を届けることができると知った。

 17日、牧場から約1キロ離れた場所から、2リットルのペットボトル6本が入った箱をくくり付けた大型のドローンが飛び立った。ドローンは半日がかりで40往復し、約960リットルの水が届いた。

 駒寄さんは早速、水を牛に与え、餌に混ぜた。むしゃむしゃと勢いよく餌を食べる牛たちを見て、「これで牛の命がつながった」と目を細める駒寄さん。子牛は「モー」と元気よく鳴き、母牛の乳をむさぼるように飲んだ。

 水は数日しかもたず、牛舎も地震で損傷したため、道路の復旧を待ち、別の場所に牛を避難させる予定だ。駒寄さんは「まだまだ厳しい状況が続くが、能登牛のブランドを守らんなん」と決意を口にした。

© 株式会社北國新聞社