〈1.1大震災〉それでも氷見に根付く 移住、Uターン者めげず

地震にめげず店を開ける堀本さん=氷見市中央町

 能登半島地震で震度5強の大きな揺れに見舞われた氷見市で、移住者やUターン者の飲食店が地震にめげず営業を再開している。開業して間もないバーやカフェの店主らは自らも被災し、観光客が戻る見通しも見えないものの「まちを元気にしたい」と店に明かりをともす。店主は予想外の苦難にも氷見で生きていく意志を一層強くし、前を向いている。

  ●開業間もない飲食店も被災

 「オープンしてすぐですからね。さすがにショックでしたよ」。昨年11月、市中心部の中央町で「Bar(バー)堀本」をUターン開業したバーテンダー堀本秀輔さん(35)は顔をゆがめた。

 堀本さんは東京などで腕を磨き、ふるさとのにぎわいに一役買おうと独立開業したばかり。店に大きな損壊はなかったが、真新しい床にはひびが入り、ウイスキーが15本ほど割れて床に散乱したという。

 まちなかでは観光客が戻る兆しは見えず、休業が続く飲食店もあるが「一つでも店の明かりがともれば、まちも明るくなるはず」と11日に営業を再開した。

 客は一日5人ほどだが「普段は外で飲まんけど、たまらんなって来た」「少しストレス解消できたわ」との声が掛かり、家が損壊するなどして疲弊した地元民の心を癒やしている。堀本さんは「息抜きできる場所として開け続けたい」と力を込めた。

 神奈川県の湘南地区から移住した白川由美子さん(47)と石田卓也さん(42)が営む氷見市谷屋のカフェ「キッサ・スペシャル・スターリムズ」は4日から再開。店は山あいの地区にあり「地域の人が安心してくれたら」と断水の解消前から甘酒やコーヒー、おにぎりを無償提供した。

 氷見や能登など被災地の復興支援にも動きだし、売り上げの一部を義援金に充てている。白川さんは「能登の玄関口の氷見が明るくならないと、能登の復興も進まないはず。前を向いて自分たちにできることやっていきたい」と意気込んだ。

  ●市は影響懸念

 氷見市ではコロナの収束に伴い移住者が増加傾向にあり、昨年度は市IJU応援センターを介した同市への移住者が22組42人を数えた。2年連続で過去最多を更新し好調だったが、市内の民間住宅が被災者の応急住宅となり受け皿が減少したことや、地震への恐れなどから移住ペースの下降が懸念される。

 同センターでは今後、災害ボランティアを兼ねた市内の見学ツアーなどの開催も検討しており、担当者は「移住にダメージは出るだろうが、氷見の良さを知ってもらえる企画を地道に続けていくしかない」と話した。

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