「人をハッピーにすることに全力集中」がん手術20回以上…人工膀胱でも“超ポジティブ”の理由【現場から、】

30年近くがんの再発と手術を繰り返し、1年前から「ストーマ」と呼ばれる人工膀胱をつけて働いている男性。数々の中小企業を支援してきたこの男性は、いかにして病気と向き合っているのか、その原動力を追いました。

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小出宗昭さん(64)。28年前、銀行員だった36歳の時、膀胱がんと診断されました。再発するたびに内視鏡手術でがんを切除。膀胱だけで16回、これまでに受けた手術は合計20回以上にのぼります。

小出さんは、中小企業の支援をしています。「SOHOしずおか」や静岡県富士市の産業支援センターで中小企業の経営相談や新商品開発のアドバイスをしていました。いまは、企業支援のノウハウを全国に広めています。

<小出宗昭さん>
「目の前に現れる中小企業者はみんな人生かけて仕事しているわけで。その人たちと向き合うと彼らをハッピーにすることに全力集中するし、感謝もされるし。ものすごい僕にとっての喜びにつながるし」

1年前、新たな局面が訪れました。がんが筋肉に浸潤し、膀胱を全摘。人工膀胱「ストーマ」を着けるようになりました。

<小出宗昭さん>
「常にストーマが着いてっていうのって、まったく想像も付かないですよ。まったく。しかも僕の場合は、その状態において全国走り回らなきゃいけなくて。しかもスーツ姿で」

膀胱を全摘した後も、お気に入りのスーツを着て働き続けるために、サイズを大きめに直しました。

<小出宗昭さん>
Qサイズを直したズボンって?
「全部直しましたよ。ただ直した様子って全然分からない。足回りも広げている」

翌日から2日間の出張です。

<小出宗昭さん>
「夜間用のウロガードをベッドの脇に着けて、ストーマにつなげて」
Qビジネスバッグも見せてもらっていいですか?
「下着は必ず入ってるし。交換用のストーマも」

小出さんは、東京都国立市のビジネスサポートセンターのセンター長を務めています。週に2回、事業者に直接アドバイスをしています。この日は、近所でベーカリー店を営む夫妻が相談に訪れました。

<小出宗昭さん>
「そうそうそうそう!そういう感じ。そうすると常に新商品だし、常にそういうテーマ設定のものが出るから、全然違う魅力が伝わってくんじゃないかな」
<相談者>
「それもいいですねー」

<相談者夫婦>
「超ボジティブじゃないですか。だから一緒にいるだけで元気になれます。できない理由を考えるよりもどうやったらできるかを考えた方がすごく前向きでいいよねって話を」

「超ポジティブ」。常に前だけを見るビジネスの姿勢は、病気と闘う小出さん自身の姿でもあります。

<小出宗昭さん>
「ドクターたちの言葉、ナースたちの言葉で、もののすごく支えられてる感じがしたんですね。何かの強い支えがあればこそ、その病気と向き合うことができるんじゃないかと思うんですよね。僕らの仕事ってのは一貫して、皆様方を応援する仕事であって、かつ支える仕事。だから仕事の重要さというものが余計わかる」

小出さんは、薬の副作用で体がつらい日もあるんですが、自身の姿をさらけ出すことで病気と向き合う人たちの希望につながればと話していました。私も取材を通して日々を生きるパワーをもらいました。

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