2023年の自動車部品メーカーの倒産 前年の1.6倍 今後はEV対応とダイハツ不正の影響が懸念

~ 2023年「自動車部分品・附属品製造業」の倒産 ~

2023年の自動車部品メーカーの倒産は35件(前年比66.6%増)で、前年の1.6倍に増加した。過去10年では、2017年の30件を上回り、最多を更新した。
負債総額は100億8,200万円(同334.1%増)で前年の4.3倍に大幅に増加。過去10年ではエアバッグ世界シェア2位で製造業最大の大型倒産となったタカタ(株)(東京)が倒産した2017年の1兆5,185億9,000万円、2020年の660億4,400万円に次ぐ、3番目の規模となった。

日本自動車工業会によると、2022年の国内自動車生産台数は2018年(972万9,594台)から4年連続で減少、783万5,482台(前年比0.1%減)だった。自動車部品メーカーは、自動車メーカーの生産台数に変動があっても、規格・品質の維持のため継続的な設備投資を避けられない。
2023年1-6月の国内自動車生産台数は432万3,975台(前年同期比19.0%増)と回復してきたが、過去の設備投資に伴う借入金が重荷となって経営破たんした自動車部品メーカーが増えている。

形態別では、破産などの消滅型が32件(前年比60.0%増)で9割(構成比91.4%)を占め、受注不振から先行きが見通せず、消滅型を選択せざるを得ない実態が表れている。
資本金別では、1千万円以上が18件(前年比260.0%増)で前年の3.6倍に急増。負債額別では、負債1億円以上が19件(同111.1%増)と前年の2.1倍に増え、中堅規模にも倒産が広がっている。

ダイハツ工業(株)の品質不正による影響も危惧される。東京商工リサーチの「ダイハツ工業グループ」取引先調査では、ダイハツ工業および主要子会社5社と1次、2次の取引がある企業数は6,084社にのぼることが分かった。自動車部品メーカーは、コロナ禍からようやく回復途上の中小企業が多く、ダイハツ工業の不正の余波が経営を直撃する可能性もある。また、市場拡大が続くEV(電気自動車)への対応に加え、材料高や人手不足など、自動車部品メーカーを取り巻く環境は明暗入り乱れている。今後は、こうした環境変化への対応や生産効率への取り組みがポイントになるだろう。

※本調査は、負債1千万円以上の倒産集計から日本標準産業分類「自動車部分品・附属品製造業」の2023年(1-12月)を抽出し、分析した。


自動車部品メーカーの倒産は35件、前年の1.6倍

2023年の自動車部品メーカーの倒産は35件(前年比66.6%増)で、前年の1.6倍に急増した。過去10年では、2017年(30件)を上回り、最多件数を更新した。
2019年以降、消費増税に伴う需要減やコロナ禍の各国ロックダウンによるサプライチェーン問題、半導体不足など様々な要因により、各自動車メーカーは減産を余儀なくされた。そのため、下請的な位置付けにある自動車部品メーカーも受注が低迷し、業績が悪化した企業は多い。
ゼロゼロ融資などのコロナ関連支援策で資金繰りが支えられたことにより、2021年の倒産は9件(前年比67.8%減)と抑制されたが、こうした支援策も終了し、業績の立て直しが後手に回った企業の息切れ倒産が増えている。

【原因別】販売不振が6割超

原因別は、最多の「販売不振」が23件(前年比76.9%増)で、全体の6割超(構成比65.7%)を占めた。次いで、「既往のシワ寄せ(赤字累積)」が6件(前年比25.0%減)、「他社倒産の余波」(前年ゼロ)と「設備投資過大」(同ゼロ)が各2件で続く。
『不況型』倒産(既往のシワ寄せ+販売不振+売掛金等回収難)は、29件(前年比38.0%増)で全体の8割(構成比82.8%)を占めた。

【形態別】消滅型が9割

形態別は、消滅型が32件(前年比60.0%増)で全体の9割(構成比91.4%)を占めた。内訳は、破産が31件(前年比72.2%増)、特別清算が1件(同50.0%減)だった。
再建型は、民事再生法の1件(前年同数)にとどまった。販売不振から先行きが見通せず、消滅型を選択せざるを得ない実態が表れている。
このほか、取引停止処分が2件(同ゼロ)だった。

【資本金別】件数は1千万円未満と1千万円以上で拮抗

資本金別は、1千万円未満が17件(前年比6.2%増、構成比48.5%)、1千万円以上が18件(同260.0%増、同51.4%)と拮抗している。しかし、1千万円以上は前年の3.6倍に急増した。
内訳は、最多の「1千万円以上5千万円未満」が16件(前年比220.0%増)。次いで、「1百万円以上5百万円未満」が8件(同14.2%増)、「5百万円以上1千万円未満」が7件(同250.0%増)と続く。

【負債額別】1億円以上が過半数

負債額別は、負債1億円以上が19件(前年比111.1%増)と前年の2.1倍に増加し、過半数(構成比54.2%)を占めた。内訳は、「1億円以上5億円未満」が16件(前年比100.0%増)、「5億円以上10億円未満」が2件(同100.0%増)と続き、「50億円以上」の大型倒産も1件(前年ゼロ)発生した。生産設備などへの投資が必要なことから、負債は膨らむ傾向にある。
1億円未満は16件(前年比33.3%増)だった。内訳は、「1千万円以上5千万円未満」が9件(同28.5%増)、「5千万円以上1億円未満」が7件(同40.0%増)だった。

© 株式会社東京商工リサーチ