第百四回「ダサさを通り越した格好良さがある60年代のソウルスター、ウェイン・コクラン」

先月も先々月も、オーティス・レディングの関係でしたけれど、今月も息子とオーティス・レディングを探していました。 以前までは頻繁に風呂屋に、オーティスを探しに行っていたのですが、最近は息子の中で、オーティスは風呂屋に居ないと確定してしまったのか、あまり行かなくなってしまったのです。それよりも、近所の川を自転車でうろつき、鯉に餌をあげながら、オーティスを探しています。でも、やはり見つかりません。 オーティスからの流れで、最近、息子のお気に入りは、「あの、格好悪いおじさん」です。「あの格好悪いおじさんの『お前をはなさい』を聴きたい」とのリクエストが頻繁になっています。 さて、この、格好悪いおじさんのというのは、ウェイン・コクランのことです。

ウェイン・コクラン、これまで聴いたことがあったような無かったような、ミュージシャンです。まず、写真を検索してみればわかる通り、若いころは、というか年齢不詳なのだけれど、強烈にふざけぬかした白髪のリーゼントです。それで、経歴を検索してみると、なんとオーティス・レディングのバンドでベースを弾いていて、その後、ジェイムズ・ブラウンと仲良くなり、ファンキーな歌を唄って、人気者になり、最後は、フロリダで聖職者になったとのこと。教会で説教しながら唄っている姿の映像があります。そして78歳で亡くなったそうです。 なんだか得体の知れない経歴ですが、オーティスの「I Can't Turn You Loose」を唄っていて、これまた映像を探すと、ジェイムズ・ブラウンと一緒に共演して、対抗するように、変な踊りをを踊っています。

わたしの場合、息子に言われるがまま、いろいろな「I Can't Turn You Loose」を探しまくっていたら、ウェイン・コクランのものが出てきたのです。 これは『C.C.ライダー』というバイク映画のサウンドトラックに入っているものなのですが、ウェイン・コクランの歌う「I Can't Turn You Loose」は、なんとも濃い感じで、濃過ぎて、癖があって、格好良いとは言い難いのです。でも、なんだかわからず聴いてしまうような感じだから不思議です。だから、一緒に聴いていた息子に「これ、なんだか格好悪いな」と言いました。 さらに映像を探してみたら、『C.C.ライダー』の映画の中で、実際に、ウェイン・コクランが、「I Can't Turn You Loose」を唄うシーンがあるのです。これが衝撃の格好悪さで、8回転くらいして、もう、逆の逆のわけわからない感じになって、格好良く見えてきます。

たしかに、歌も踊りも、それなりにうまいのだけど、すべてがダサいのです。なんなのでしょうか、このダサさ。でもダサさを通り越した格好良さがあって、もうわけがわからない。その映像を息子と見ながらまた、「いやあ、格好悪いねえ〜」と感心するように言いました。だから、息子は、最近、「あの格好悪いおじさんの歌を聴きたい」と言うのです。これが、ウェイン・コクランです。 他にも、ウェイン・コクランの映像をいろいろ見てみましたが、どれもこれもダサくて、格好悪くて、最高です。そんなこんなで、今回は、ウェイン・コクランの「I Can't Turn You Loose」が入っている『C.C.ライダー』のサントラを紹介します。 そして、今後もウェイン・コクランのことを掘り下げて、いきたいと思います。このダサさは中毒になります。 なんだかわたしは、ウェイン・コクランのことをよく知らないので、言いたい放題言ってしまっていますが、心から好きな方がいたらどうもすみません。でも、わたしも、今後、心から好きになってしまいそうで、ちょっと怖いのでした。

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