小田原の中小企業の鋳造技術、宇宙へ 小型探査機の脚に装着する衝撃吸収材を提供 20日に月面着陸挑戦

手元に残された試作途中の衝撃吸収材と探査機の着陸の様子を描いた図を手にするコイワイの小岩井専務

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発し、20日に月面着陸に挑戦する小型探査機「SLIM(スリム)」には神奈川県小田原の鋳物製造「コイワイ」(小岩井豊己社長)の技術が採用されている。着陸が成功すれば、旧ソ連、米国、中国、インドに続き5カ国目。ただし従来の各国の着陸精度は数キロから十数キロの範囲で、スリムが狙う100メートル以内のピンポイント着陸を成功させれば、世界でも前例がないものになる。コイワイはその成否を左右するといえる、探査機の脚に装着する衝撃吸収材を提供した。

 1973年創業のコイワイは、鋳物製造販売で短納期の試作を強みにする独立系の中小企業で、自動車メーカー各社のエンジン部品を造ってきた。従来製品は職人技に頼る一方、デジタル化の波をいち早く捉え、国内業界の先駆けとなる3Dプリンターを十数年前から導入。特に金属を溶融しながら成形できる金属3Dプリンターを取り入れたことが、宇宙への道を開いた。

 JAXAの今回のミッションには、月への高精度着陸技術を実証すると同時に、軽量な探査システムを実現し、月惑星探査の高頻度化に貢献する目的がある。

 搭載された衝撃吸収材は、アルミニウム製の半円球でおおよそ直径18センチ、重さ400グラム。実証機スリムの5本の脚先に装着された。立体的に網目を巡らした構造で、月面に接触する際につぶれることで確実な着陸を実現するという。

 昨年9月7日に鹿児島県から国産のH2Aロケット47号機で打ち上げられたスリムは、無事に月の周回軌道に投入され航行中。側面のカメラで撮影画像と月面の地図を照合しながら自らの位置を推定し、ピンポイント着陸を目指している。

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