栃木県那須烏山市内の養豚場で2022年7月に発生した豚熱(CSF)で、感染の疑いがあることを知りながら県への届け出を怠ったとして、県警生活環境課と那須烏山署は19日、家畜伝染病予防法(届け出義務)違反の疑いで、農場を経営していた畜産大手「神明(しんめい)畜産」(東京都東久留米市)と那須烏山市内の養豚場の元取締役で現場管理者だった男性(47)を書類送検した。男性は県警の調べに、「死亡数の増加から豚熱かもしれないと思ったが、発症すれば全頭処分で会社が倒産する可能性があると思った」などと容疑を認めている。
送検容疑は、22年6月中旬ごろ、同市内の養豚場で複数の豚が突然死んだにもかかわらず、速やかに県に届け出なかった疑い。県警は食の安全を揺るがす事件として、起訴を求める厳重処分の意見を付けた。
男性は下野新聞社の取材に「確かに報告はしなかった。捜査は続いているので詳しい内容はノーコメント。警察や検察に協力し、その判断に従う」と話した。
県警によると、男性は当初、熱中症など他の病気を疑ったという。一般的な病気の対策として養豚場の消毒などを行っていた。男性は会社に豚が死んだことは伝えたが豚熱の疑いは報告せず、獣医師に豚の死因調査業務をさせていなかったとみられる。
感染確認を受け、養豚場では国内最多の計5万6298頭が殺処分された。
県は23年4月、同法違反容疑で刑事告発。県警は同月、養豚場などの家宅捜索のほか、豚が大量死した施設内の現場検証を行った。押収資料を分析するなどし、6月中旬ごろから豚が死んでいたことを確認した。
書類送検を受け、福田富一(ふくだとみかず)知事は「二度とこのようなことが起こらないよう畜産農家に対し、飼養衛生管理基準の順守や異常発見時の早期通報の徹底を指導していく」とコメントした。