プール小1男児死亡 あの日何があった 「浅い方にいると思っていた」報告書から発生時を再現

事故があった屋外プール。柵の奥にある深い方のプールで男児が亡くなった(長浜市野瀬町・あざいカルチャー&スポーツビレッジ)

 昨年7月26日に滋賀県長浜市野瀬町の屋外プールに学童保育の活動で来ていた小学1年の男児=当時(6)=が溺れて死亡した事故の第三者検証委員会が報告書を出し、児童の泳力の把握や監視体制の構築など、プール活動に特化した安全管理が不十分だったなどと結論付けた。検証委の一杉正仁委員長(滋賀医科大教授)は9日の記者会見で「亡くなったお子さんはプール活動の安全性に警鐘を鳴らした」と述べた。悲劇を繰り返さないために事故からくみ取るべき事柄は多い。A4判70ページに及ぶ報告書から当時の経緯を再現した。

 市の委託を受けた民間事業者が運営する学童保育「キッズパーク放課後児童クラブ」のプール活動は年度で当日が初めてだった。小学1~6年の児童46人が参加した。

 監視にあたる支援員らは4人。支援員A、B、Cは放課後児童支援員資格を持ち、経験年数は6~11年。もう1人は大学生のアルバイトで支援員資格はなかった。プール活動前に4人は、プールサイドかプール内かなど監視時の配置を決めた。

 午後1時前、クラブからプールに児童らが到着した。Aが「プールサイドを走らない」「何かあったら声を出して先生(支援員)を呼ぶ」などと注意事項を告げた。一方で、支援員らは参加児童の泳力確認はしていなかった。

 プールは深さ1.1~1.3メートルの深い方と60センチの浅い方があり、間に柵が設けられている。Bは、泳げない児童や、身長120センチの男児ら1、2年生は浅いプールに入るよう呼びかけた。

 見学することになった1人を除く45人が午後1時ごろからプールに入った。支援員ら4人のうちアルバイトは見学児童に付くことになり、Aはプールサイドで、BとCはプールに入って監視した。

 3人は男児がプールに入るところを見ていなかった。Bは、1年生の男児は浅いプールにいると思っていた。

 深い方のプールで男児が動かない状態で浮いているのを児童が見つけた。Aがプールサイドに引き上げたところ意識不明で、心肺蘇生を施した。

 午後1時18分、Aの指示でBが電話で救急要請した。続いて自動体外式除細動器(AED)を約150メートル離れた事務所に取りに行った。AEDがある場所を把握していたのはAのみで、Bは把握していなかった。

 Cはプールから上がってAの心肺蘇生を補助した。他の児童はプールに入ったままだった。

 日本救急医療財団の「AEDの適正配置に関するガイドライン」では「AEDは、心停止から5分以内に電気ショックが可能な配置が望ましい」と記載する。

 救急要請から5分後の同23分、Bがプール職員と事務所からAEDを持って戻り、電源を入れた。AEDで心電図解析をしたところ、「電気ショックは不要」との音声案内があった。「無脈性電気活動」の状態で、Aやプール職員は心肺蘇生を続けた。

 同28分、救急隊などが到着。男児は心肺停止状態だった。同41分、ドクターヘリが到着。男児を搬送した。午後3時20分ごろ、搬送先病院で男児は死亡が確認された。

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