佐野の「天明鋳物」国重文指定へ 文化審議会が答申 有形は県内2例目

文化審議会が答申した「天明鋳物の生産用具」などの一部(佐野市提供)

 文化審議会(佐藤信(さとうまこと)会長)は19日、栃木県佐野市が所有する「佐野の天明(てんみょう)鋳物生産用具及び製品」1556点を国の重要有形民俗文化財に指定するよう、盛山正仁(もりやままさひと)文部科学相に答申した。3月にも指定される見込み。国の重要有形民俗文化財指定は県内では2008年の野州麻に次いで2例目。

 天明鋳物の起源は平安中期にまでさかのぼるとされ、梵鐘(ぼんしょう)や茶の湯釜から農具、生活用品など多様な製品を鋳造してきた。市内では現在4軒の鋳造所が操業し、卓越した技術を継承。生産されたさまざまな製品は、伝統工芸品としての高い評価を受けている。

 今回答申されたのは、明治期を中心に大型高炉や大量生産用の金型が普及する以前の鋳物の生産用具など。原材料の調整から鋳型の製作、溶解と湯入れ、製品を取り出す型ばらし、仕上げといった鋳造全般に関わる用具が体系的に分類、整理されている。当地の鋳物師による生産活動の実態を伝える資料群であるという。

 鋳型の製作に用いられた木型や原型、押型が充実し、多様な注文に応じていた当地の鋳物師の鋳造技術の高さをうかがい知れるとして、日本の鋳造生産の変遷を考える上で重要などと評価された。

 文化審議会はほかに「法多山の田遊び(静岡県袋井市)」など4件を重要無形民俗文化財に指定するよう答申し、重要有形民俗文化財は227件、重要無形民俗文化財は333件となる。

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