遊佐沖の風力発電、事業者公募を開始 

洋上風力発電の促進区域に指定された遊佐沖。国が事業者公募を始めた=遊佐町

 経済産業省と国土交通省は19日、再エネ海域利用法に基づく洋上風力発電「促進区域」の本県遊佐沖について、事業者公募を開始したと発表した。風車の整備や維持管理に必要な物資、人員の輸送は酒田港を利用できるとした。事業計画などの審査を経て今年12月に事業者が決まり、最短で2030年6月ごろの稼働開始が想定される。

 想定海域は南北8.3キロ、約5キロ沖合までの4131.1ヘクタール。海岸線から1カイリ(1852メートル)までは国定公園の一部であることや沿岸漁業への配慮から、風車を設置しないとする。風車は土台を海底に固定する着床式で、発電出力は45万キロワットと見込む。

 公募の受け付けは7月19日まで。事業者選定は▽供給(売電)価格▽事業計画の迅速性▽電力の安定供給▽周辺の航路や漁業との協調▽地域経済への波及効果―などの項目で、知事らの意見を踏まえて評価する。事業者には30年間海域を占有する権利が与えられる。

 本県沿岸では昨年10月、遊佐沖が事業者選定などを進める最終段階の促進区域に、酒田沖が3段階のうち2段階目の「有望な区域」に指定された。県は酒田港について、風車の建設や維持管理の拠点となる「基地港湾」指定を目指し、港湾計画の変更や国への要望に取り組んでいる。

 遊佐沖に加え、青森県沖日本海(南側)の事業者公募も始まった。

活性化、住民ら期待 反対派「多くの人概要知らない」  再エネ海域利用法に基づき、洋上風力発電の「促進区域」に指定されている本県遊佐沖で19日、発電事業者の公募が始まった。選定された事業者は最長30年間、海域を占有する大型事業だ。本格的な動きに、住民は地域の活性化を期待する。反対派の町民は「多くの人が計画の概要を知らない中で事業が進んでいる」と憤った。

 町内の漁師・土門拓也さん(50)は、促進区域周辺で夏から秋にかけてタイなどを追っている。「発電設備の建設が進めば、漁場が限られてしまうので、漁業者への支援をしっかり考えてくれる事業者が選ばれてほしい」と注文した。

 西遊佐地区まちづくりの会の伊藤新一会長(76)は、事業者に対し、住民に寄り添った地域貢献の必要性を訴える。巨大な風車が立つことに住民の間に賛否があるとし「不安を解消してもらい、町民の暮らしが豊かになることを願う」と語った。

 時田博機遊佐町長は「最大30年という長期間に及ぶ事業だ。町、地域と一緒にまちづくりに取り組み、共に町民の幸せのため、脱炭素社会の実現のために汗をかいてもらえる事業者から応募いただくことを期待している」との談話を発表した。

 事業に反対する住民グループ「山形県鳥海山沖の巨大風車はいらない有志の会」の伊藤えり子世話人(72)=遊佐町=は「町内の多くの人が計画の概要などをまだ知らずにいる中、促進区域に指定され、事業者公募が始まったことに強い怒りを覚える」と語気を強めた。町内の街頭に立ち、事業反対を訴える活動を今後も続けるとした。

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