佐野の天明鋳物、国重文指定へ ブランド力向上に弾み 17年かけ念願の答申

若林鋳造所での天明鋳物の伝統的な作業風景

 栃木県佐野市が誇る「佐野の天明(てんみょう)鋳物生産用具と製品」が本年度内にも、国重要有形民俗文化財に指定される見込みとなった。現存する鋳物産地で国内最古といい、その歴史は千年を超えるとされる。民間団体と行政が連携し17年かけて念願の国指定への答申にこぎ着けた。関係者らは「天明鋳物や佐野のPRに弾みをつける契機としたい」と意気込む。

 国指定には、2007年に発足した市民団体「天命鋳物伝承保存会」(若林洋一(わかばやしよういち)代表)が大きな役割を果たした。

 会員数は約150人で08年に市、11年には県の指定を実現した。国指定に向けて市と協力し、さらに市内に残る生産用具などを収集し一層の充実に努めた。膨大な量の整理、分類から写真や用途解説などの資料づくり、デジタルデータ化と、必要となる緻密な作業を進めてきた。

 5代目の鋳物師で、代々受け継いできた貴重な生産用具などが指定されたことに、同保存会副代表の若林秀真(わかばやしほつま)さん(70)は「先人たちの積み重ねがあって今がある。感謝と同時に鋳物師の仕事が後の100年、200年と伝えられるよう一層精進していく」と決意を新たにする。

 天明鋳物による地域振興を掲げる市は、佐野商工会議所による昨年の商標登録とともに、国指定を取り組みを加速する「両輪」として位置付けてきた。金子裕(かねこゆたか)市長は「官民一丸の取り組みの成果。次の千年を開けるよう取り組みを進め、一層のブランド力の向上、佐野の知名度アップにもつなげたい」と意欲をみせる。

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