仮想空間から農産品提供 農業法人農園貞太郎(酒田)、実証事業に参加

「D―Farm Village」のデモ画面

 酒田市の農業法人農園貞太郎(ていたろう)(遠藤久道代表取締役)が、仮想空間上の畑などを舞台として消費者とつながる実証事業に参加している。東京のIT企業が構築を目指しているサービスで、複製や改ざんを難しくしたデジタルデータ「非代替性トークン(NFT)」の仕組みを利用する。消費者は取り組みに共感した生産者のNFTを購入することで、生産者から後日、実際の農産物などのサービスを受けられる。

 農園貞太郎は、未利用農作物を使った除菌ウェットティッシュの製造や、もみ殻などを炭化した「バイオ炭」を肥料として与えることで二酸化炭素削減量を視覚化した「CO2削減米」を販売するなど、持続可能な農業に取り組んでいる。通常の農法よりコストがかかることから、販路を拡大するのが喫緊の課題という。

 実証事業は、IT企業BIPROGY(ビプロジー)(東京、平岡昭良社長)が行っており、農園貞太郎のほか、同様にサステナブルな取り組みをしている全国の農業法人など約10社が参加している。

 想定する舞台は「D―Farm Village(ディーファームビレッジ)」という畑や海を模した仮想空間だ。消費者は空間内でアカウントを取得し、気に入った生産者からNFTをクレジットカード決済などで購入する。生産者は消費者へ、農産物や収穫体験ツアーなどのサービスを提供する。また、購入額の一部を消費者からの寄付として受け取り、活動資金とする予定だという。

 18日にはBIPROGYの担当者ら5人が視察のため酒田市を訪れた。農園貞太郎のバイオ炭を加工している施設や、同法人が日本酒の原料として「雪若丸」を提供している酒蔵などを見学した。遠藤代表は「今回の取り組みは生産者の新しい支援の在り方として期待している」と語った。BIPROGYは2024年度のサービス開始を目指している。

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