【日曜特番・北陸の観光業に打撃】にぎわい一転、金沢は人影まばら 「復興へ、経済回そう」

地震後、人通りが少なくなった金沢市片町のスクランブル交差点=19日夜

 能登半島地震を受け、北陸3県の観光地の入り込みが大幅に減っている。新型コロナの5類移行後、にぎわいが回復していた金沢市中心部は一転して人影がまばらとなり、各温泉地の旅館は予約キャンセルが相次ぐ。北陸新幹線敦賀延伸に向けた石川県のPR事業も延期に。関係者は被災地・能登を心配しながら「復興のために経済を回していきたい」と対策を模索する。

 地震から半月余りが過ぎた18日夜、北陸随一の繁華街・金沢市片町界隈(かいわい)は閑散とし、暇を持て余したタクシーの長い列ができていた。

  ●「せめて地元客来て」

 柿木畠の飲食店「あまつぼ」は本来なら新年会シーズンを迎え、混み合う時期だが、2、3人のグループ2組が静かに食事しているのみで、空席が目立つ。社長の雨坪毅樹さん(62)は「地震後から宴会予約のキャンセルばかり。またコロナ禍に戻ったようだ」とため息をつき、こう強調した。

 「金沢で経済を回していかないと、能登を応援しようとしてもできなくなる」

 地震前は、日中から行列ができていた片町2丁目の「赤玉本店」も昨年1月に比べて客数と売り上げが半分になっている。専務の田端葉月さん(37)は「せめて地元客が来てくれれば」と願う。

 兼六園の近くで飲食店を営む宮本清仁さん(64)は「石川県外の人には、県全体が被災したというイメージがあるんじゃないか」と話す。売り上げは落ち込み、新型コロナウイルス禍と同様に「補償が必要になるかもしれない」と嘆く。

 市内のホテルでは、観光客のキャンセルが相次いだ。金沢駅前にあるホテルの担当者によると、地震前は金沢と能登半島をセットで訪れる客も多かった。「能登に行けないと、旅行先として石川を選択肢から外す人も多いのでは」と話す。その上で「また落ち着いた頃に来てもらえれば」と期待した。

  ●復旧支援で宿泊

 観光客のキャンセルが出る一方、能登の復旧支援のために全国から駆け付けた電力会社の社員や行政関係者らが宿泊する動きも目立つ。

 震度7を観測した能登半島地震は世界的ニュースとなった。別のホテル支配人はインバウンド(訪日外国人)への影響を懸念し、「石川県や金沢市には『金沢は日常が戻っている』と広報してほしい」と訴えた。

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