レッドブルとの交渉決裂後もポルシェはF1復帰を排除せず「チャンスがあれば飛びつく準備ができている」

 ポルシェによる2026年F1参戦の試みは失敗に終わったが、ポルシェモータースポーツ・セールス担当ディレクターであるミハエル・ドライザーによると、同ブランドは将来のF1復帰の可能性を排除していないという。

 ヴァイザッハに本拠を置くドイツのメーカーは、F1の将来の技術規制に適合するよう設計されたパワーユニットで、すでに多くの開発作業を行っていた。しかし、レッドブル・グループとの交渉が決裂したことでプログラムを中止せざるを得なくなったいま、当面のレースの焦点はスポーツカーとフル電動フォーミュラ・シリーズに移っている。

 ドライザーは『Blackbook Motorsport』のインタビューにおいて、「F1は依然、私たちにとって興味深いチャンピオンシップである」と認め、「モータースポーツはつねに私たちのブランド・アイデンティティの中心である」と付け加えた。

 しかし今のところはポルシェのマネージャーが説明するように、彼らの焦点は別の場所にある。「今後数年間はWEC世界耐久選手権とIMSAシリーズのポルシェ963と、ポルシェ99XエレクトリックによるフォーミュラEのファクトリープログラムに焦点を当てることになる」

「我々は最終的な勝利のために、そこで戦いたい」と同氏は続けた。

6号車ポルシェ963(ポルシェ・ペンスキー・モータースポーツ) 2024年IMSA公式テスト

 フットワークチームとの悲惨な終わりを迎えたF1キャンペーンから30年以上が経ったいま、ポルシェがふたたびグランプリレースに復帰する可能性について尋ねられたドレイザーは、「これは私たちの伝統であり、私たちの主な目標である。このテーマに関する憶測にはコメントしない」とだけ述べた。

「したがって差し迫ったものは何もないが、ポルシェは目を光らせ続けており、ほんの少しでも具体的なチャンスがあれば飛びつく準備ができている」

 ポルシェがレッドブルとの交渉決裂後にF1プロジェクトから撤退したのは、ドイツメーカーが内燃機関の設計と開発にレッドブルの新しいパワートレイン部門の支援を必要としていたからだ。当時ポルシェのエンジン部門は、現代のF1パワーユニットの一部であるハイブリッドシステムの設計と開発に集中していた。

 ふたつの会社はどちらも経営権をコントロールしたいと考えていたため、その交渉は決裂した。故ディートリッヒ・マテシッツは当初、このパートナーシップが自分がいなくなったあとグループが保有するふたつのF1チームの将来を確実なものにする方法だと確信していたが、最終的にはヘルムート・マルコに説得された。

 ゼロからICE(内燃機関)を設計し始める時間もなく、他のチームにその仕事を任せることもできなかったポルシェは完全に撤退することになった。しかし、ドライザーが述べたように、ヴァイザッハのチームはセンセーショナルなF1復帰への扉を閉じた訳ではない。

ミハエル・ドライザー(ポルシェモータースポーツ・セールス担当ディレクター)

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