40代子育て中の女性が納得いくキャリアチェンジをするために必要な5つのこと

先日、ファイナンシャルプランナーの筆者の元に、2人の子どもを持つ40代の女性が相談に訪れました。「今の会社を退職し、心機一転、職業訓練に通って資格を取得し、介護の仕事にチャレンジしようと思っている」とのことでした。

これまで会社任せにしていた分、退職を前に“自分が何をするべきか”について全然把握していないことに気付き、不安になってしまったそうです。

そのきっかけになったのが企業型の確定拠出年金(DC)の移管手続きでした。子育て中の女性にとってのキャリアチェンジは、相談者が悩んでいる企業型DCだけでなく、様々な選択に直面することになります。今回は、フルタイムで働く子育て中の女性がキャリアチェンジを考えたときに準備しておきたいポイントについて、わかりやすくまとめました。


企業型確定拠出年金の移管手続きを確認する

転職先によって移管手続きは異なる

企業型確定拠出年金(DC)とは、毎月の掛金を企業が負担し、加入者(従業員)が自ら商品を選択し、運用を行う制度です。確定拠出年金では原則60歳まで年金資産の引き出しはできません。会社を退職する場合、企業型DC制度を利用して積み立ててきた年金資産は、退職後の状況に合わせた移換手続きが必要となります。

①転職先に企業型DC制度がある場合
転職する方で、転職先に企業型DC制度がある場合は、これまでの掛金をそのまま転職先の企業型DCに移換することが可能です。転職先で移換手続きを行いましょう。

②転職先に企業型DC制度がない場合
転職する方で、転職先に企業型DC制度がない場合は、個人型確定拠出年金(iDeCo)に移換することになります。また、転職先に企業型DCの制度はないが、確定給付型企業年金がある場合、これまでの企業型DCの積立金を確定給付企業年金に移換できる場合があります。移換できるかどうか、転職先で確認してみましょう。

③公務員や自営業となる場合や仕事をしない場合
転職先が公務員の場合や、退職後に自営業となる場合、特に仕事をしない場合は、個人型確定拠出年金(iDeCo)に移換することになります。

移管手続きの注意点

先ほどの②や③のケースのように、企業型DCからiDeCoに移管する場合、国民年金基金連合会に対する一時的なコストとして税込2,829円の手数料がかかります。また、加入資格を喪失した日(退職日の翌日)の属する月の翌月から起算して6ヵ月以内に、自身で移管の手続きを行う必要があります。

この期限を過ぎてしまうと、これまで積み立ててきた年金資産が国民年金基金連合会に自動的に移換されることになります。自動移換されてしまうと、年金資産は現金の状態で管理され、その後の運用ができなくなってしまいます。その上、管理手数料が差し引かれるなどデメリットが発生するため、期限内に移換が完了するよう早めに手続きすることをおすすめします。

退職金を含めた資産を整理する

年金資産を企業型DCからiDeCoに移管する場合、証券口座をお持ちでなければ口座を開設する必要があります。これから口座を開設するならば、各種手数料の安さや取扱商品数の豊富さから、ネット証券がおすすめです。

また、転職前の在籍期間によっては、退職金を受け取る場合もあるでしょう。その場合、資産状況にも変化が生じます。ぜひこの機会に資産運用について考え直してみましょう。2024年から新NISAも始まりました。リスクを抑えた資産運用の王道は、「長期・積立・分散」投資です。長期で積立を行うために、できるだけ早めのスタートがおすすめですが、40代からでもまだまだ間に合います。

口座開設などの手続きは面倒に感じるかもしれませんが、この機会に「散らばった資産を棚卸する良い機会」と捉えてみてはいかがでしょうか。

保育園はそのまま通える?子どもの預け先を確保する

続いて、子どもが保育園に通っている場合の注意点をお伝えします。母親が仕事を辞めることで現在通っている保育園に通い続けられるのかという問題は、働きながら子育てをする女性がキャリアチェンジを考える際に、最も心配することのひとつだと思います。

退職時、すでに次の仕事が決まっているなど間をあけずに転職する場合は問題ありませんが、退職してから求職活動を行う場合は注意が必要です。子どもを保育園に預けながら求職活動を行う場合、すぐに保育園を退園とはなりませんが、再就職までの猶予期間が設定されています。この期間内に次の仕事を決めて入社しないと、保育園を退園となってしまいます。

猶予期間については90日が基本となっているようですが、厳密には自治体によって異なります。そのため、退職前にお住まいの市区町村へ、あらかじめ確認しておいた方が安心でしょう。

また、冒頭に紹介した女性のように退職後に職業訓練を受講する場合は、「就学」として保育園の認定が可能です。就学の認定には受講の時間数で基準が設けられているため、こちらも前もって確認しておくことをおすすめします。

医療保険の見直しをする

勤め先が変わることで、それまで加入していた健康保険も脱退となるため、切り替えの手続きが必要となります。間を開けずに転職先の社会保険制度に加入する場合は、会社で手続きを行ってもらえますが、そうでない場合は求職期間中の健康保険をどうするか、退職前に決めておく必要があります。

求職期間中は、現在加入している健康保険の任意継続被保険者(退職の前日までに継続して2カ月以上健康保険の被保険者期間がある方のみ可能)となるか、国民健康保険に加入するか、または家族の扶養に入るか、このいずれかとなるでしょう。

特に、現在の健康保険を任意継続する場合は、退職日の翌日から20日以内に手続きが必要です。さらに、任意継続できる期間は2年間とされている点にも注意が必要です。まずは退職前に、それぞれ保険料の負担額など、あらかじめ調べておいた方がスムーズに手続きが進みます。

このように、キャリアチェンジの際には、自身の社会保険の内容も変わってきます。健康保険によっては独自の充実した保障が上乗せされる場合もあります。また、会社で団体保険に加入していた場合、退職後は保障を継続できない場合も考えられます。キャリアチェンジによって、保障に過不足が発生することも考えられるため、この機会に加入している民間の保険についても見直しましょう。

ライフプランを作成する

キャリアチェンジをすることで、収入や社会保障に変化が生じるため、家計の状況も変化します。そのため、できるだけ早い段階で、現在の資産の状況を今一度洗い出し、キャリアプランの変更を反映したライフプランを作成しましょう。キャリアチェンジ後の家計の変化を事前に想定しておくと、スムーズに新生活のスタートを切ることが可能です。

たとえば、退職してから転職活動を行う場合、一時的に収入が途絶えることになります。その期間、家族の収入をやりくりして過ごすのか、貯金を切り崩す必要があるのか、前もってシミュレーションしておくことで、転職活動にかけられる期間が明確になります。家計の心配をすることなく、転職活動に集中できる環境をつくることは、納得いくキャリアチェンジには欠かせません。

また、ライフプランを作成することで、教育費や老後資金をはじめとした資金が必要なライフイベントを把握することが可能です。そのため、資産運用を考えるときも、「いつ」「いくら」資金が必要なのか、そのためにどんな運用方法が適しているのかが明確になります。

納得いくキャリアチェンジには早めの準備がおすすめ

お伝えしてきたように、子育て中の女性のキャリアチェンジは、様々な点に考慮して手続きを進めていかなければなりません。キャリアチェンジ後の新しい生活をスムーズに始めるためにも、早めに準備を開始して、余裕を持ったスケジュールで行動しましょう。

また、忙しい方は、ライフプランを作成するプロであるファイナンシャルプランナーに相談するのもおすすめです。プロに頼むことで、家計を把握する時間や資産運用に迷う時間を短縮でき、家計への経済効果もアップします。

2024年、新しいチャレンジに一歩踏みだすママ達を、心より応援しています。

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