重量増もポルシェが2日目最速/スーパーGT優先か/ウルフWR1をドライブへ etc.【IMSA公式テスト土曜Topics】

 1月27~28日に決勝が行われるIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権第1戦『デイトナ24時間レース』。この一大イベントを直前に控えたシリーズの公式テスト、『ロア・ビフォア・ザ・ロレックス24』がアメリカ・フロリダ州のデイトナ・インターナショナル・スピードウェイで開催されている。ここでは計3回のセッションが実施されたテスト2日目のパドックから、さまざまなトピックをお届けする。

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***1月19日(金)に始まったロア・ビフォア・ザ・ロレックス24。前日よりも気温が下がったテスト2日目は、昼間の2セッションに続いて18時30分から2時間のナイトセッションが行われた。

***今朝のセッション3でトップタイムを記録したのは、初日にベストタイムを刻んだピポ・デラーニで、チャンピオンカーである31号車キャデラックVシリーズ.R(ウェーレン・エンジニアリング・キャデラック・レーシング)のタイムは1分35秒372だった。

***続くセッション4では、フィル・ハンソンがドライブする85号車ポルシェ963(JDCミラー・モータースポーツ)が1分35秒216をマーク。初日に31号車キャデラックが記録した総合ベストを1000分の1秒上回った。このセッションでは5号車ポルシェ963(プロトン・コンペティション)が2番手となり、カスタマー963によるワン・ツーが完成している。

***ソフトタイヤを履いて最速タイムを記録したハンソンは、「JDCのみんなは今朝、とても強力なパフォーマンスを展開して本当に良い仕事をした。それが両セッションに表れたと思う」と語った。「クルマは午前中にチームメイトのリチャード(・ウエストブルック)、ベン(・キーティング)、ティメン(・ファン・デル・ヘルム)がドライブしたときから速かった。それが午後も続いた。どう変わるのかは興味深かったよ。路面温度はソフトコンパウンドで履いている間に少し上がっていた」

***この日の総合2番手タイムを記録したプロトン・コンペティションのポルシェ963は、昨年の最終戦プチ・ル・マン後に修理のために持ち出された後、12月22日にチームに戻ったばかりで、既報のとおり金曜日に行われた最初のテストセッションの開始に間に合わせることができなかった。

***夜間に行われたセッション5はふたたびキャデラックがトップに。しかしここでの最速マシンは赤いクルマではなく、チップ・ガナッシ・レーシング(CGR)が運営する01号車キャデラックVシリーズ.R(キャデラック・レーシング)だった。黄色いキャデラックは、アレックス・パロウのドライブで1分35秒705をマークしている。なお、テスト2日目では25号車BMW MハイブリッドV8(BMW MチームRLL)がいずれのセッションでもトップ3に入り、一日をとおして好調をアピールした。

***一方、GTDプロクラスで新型シボレー・コルベットZ06 GT3.Rのペアを走らせるコルベット・レーシング・バイ・プラット・ミラー・モータースポーツは、3号車と4号車が2台揃って電気系統の不調に悩まされた。3号車はセッション4に参加できず、4号車も4周しか走行できなかった。GTDクラスにエントリーしているAWAの2台のコルベットは、まだこのような問題に遭遇していない。

25号車BMW MハイブリッドV8(BMW MチームRLL) 2024年IMSA公式テスト

■アキュラが+42kg、ポルシェは+21kg

***ランボルギーニのファクトリーサポートを受けてGTDプロクラスに参戦するアイアン・リンクスは、83号車と60号車ウラカンGT3エボ2のエンジン交換を行った。

***パフ・モータースポーツは、9号車マクラーレン720S GT3エボのジェームス・ヒンチクリフを送り出す前にラジエーターブロックを外し忘れたため、第4セッションのスタートが遅れた。カナダ人ドライバーのヒンチクリフはル・マン・シケイン(旧バスストップ)の後ろでマシンを停め、ラジエターブロックを取り外してから再スタートを切った。その後9号車はセッションに復帰している。

***3.56マイル(約5.73km)のデイトナ・インターナショナル・スピードウェイのオーバル/ロードコースは、以前はグラスのランオフだったバックストレッチの内側の大きなパッチが舗装されるなど、昨年のロレックス24からいくつかの変更が加えられている。これは先月で行われたIMSA公認テストの段階ですでに見られたものだ。

***ホンダ・レーシング・コーポレーションUSA(HRS US/旧HPD)社長のデビッド・ソルターズによると、アキュラのARX-06は昨年とほぼ同じ構成で走っているという。彼はこのクルマに“EVOジョーカー”が使用されていないことを確認した。

***昨シーズンからの最大の変更点はBoP(バランス・オブ・パフォーマンス/性能調整)で、アキュラの車重はワン・ツー・フィニッシュを飾った2023年のロレックス24時間よりも約42kg重くなっている。また、ポルシェ963も21kgの重量増を受けている。昨年のデイトナでは、GTPクラスの全車が最低重量の1030kgで走行した。

***ソルターズは「我々のクルマは非常重くなっているが、それでもかなりいいクルマだ」と述べた。「一般的に、IMSAはこの手のことにかなり長けていると思う。今年は(IMSAが)改良して変えようとしている部分もある。彼らは自分たちのプロセスを開発しなければならないから、それがどうなるかを見守る必要がある。昨年はすべてが平等だったのがよかった! それが私たちのために働いた」

ジェンソン・バトンが合流している40号車アキュラARX-06(ウェイン・テイラー・レーシング・ウィズ・アンドレッティ) 2024年IMSA公式テスト
31号車キャデラックVシリーズ.R(ウェーレン・エンジニアリング・キャデラック・レーシング)と1号車BMW M4 GT3(ポール・ミラー・レーシング) 2024年IMSA公式テスト

■女性ドライバーたちが活躍中

***グラディエント・レーシングのタチアナ・カルデロンは、金曜日に66号車アキュラNSX GT3エボ22を初めてドライブした。彼女はウイルス感染症に罹患し昨年末にデイトナで行われたIMSA公認テストに参加できていなかった。「完治までに2カ月近くかかったので、残念ながらここに来ることができなかった」とカルデロン。合流が叶った今回のテストで、彼女はチームメイトの助けも借りながらGTDマシンの習熟を進めていく。「チームメイトがスピードアップを助けてくれると確信しています」

***カルデロンは自身にとってロアのオープニングとなったセッション4で合計52周をラップ。自己ベストは1分46秒720だった。これはチームメイトのキャサリン・レッグが、金曜日のセッション1で記録したGTDクラスのトップタイムとコンマ5秒弱の差しかない。

***同じく女性ドライバーのリル・ワドゥ(リシャール・ミル・AFコルセ/88号車オレカ07・ギブソン)は、インディアナポリス・モーター・スピードウェイで開催される『バトル・オン・ザ・ブリック』とスーパーGTのSUGOラウンドがバッティングしているため、ミシュラン・エンデュランス・カップと日本でのプログラムの衝突に直面している。フェラーリのファクトリードライバーである彼女は、GT300クラスに参戦するPONOS RACINGとの仕事を優先するとみられる。

***デイトナのグリッドに並ぶドライバーのうち、少なくとも11人がIGTCインターコンチネンタルGTチャレンジの開幕戦『レプコ・バサースト12時間』に参戦する予定だ。また、そのうちの4人(シェルドン・ファン・デル・リンデ、ドリス・ファントール、ケビン・エストーレ、イアン・ジェームス)は、バサーストの1週間後にプロローグテストが行われる、カタールでのWEC世界耐久選手権開幕戦にも出場することが決定している。

***ファン・デル・リンデは、ジョージア州を拠点を置くポール・ミラー・レーシングでのデビューを前に、同チームの職場環境を「プレッシャーの少ない」環境だと称賛した。「まだ少し気が早いけど、シューベルト(・モータースポーツ)やDTMドイツ・ツーリングカー選手権と似たような考え方だと思う。彼らは物事を過剰に考えない。プレッシャーがあまりないという意味では、とても重要なことだ。誰もが自分の仕事をして一日の終わりにはそれが何であろうと、僕たちは持っているものだが、チーム側からもポール・ミラー自身からも追加のプレッシャーはない」

66号車アキュラNSX GT3エボ22(グラディエント・レーシング) 2024年IMSA公式テスト

■GT3、GT4ともにF1新車発表日にお披露目か

***Sportscar365は、デイトナでそれぞれのコンペティションにデビューするGT3とGT4仕様の改良型アストンマーティン・バンテージは、2月12日にシルバーストンで開催されるイベントで、2024年のF1マシンの発表とともに正式に披露されることを理解している。

***ハート・オブ・レーシングチームとマグナス・レーシングが走らせるそれぞれのアストンマーティンのGT3カーには、レース用のカラーリングが施されている。しかしレベル・ロック・レーシングのGT4車両は、今週末のミシュラン・パイロット・チャレンジとVPレーシング・スポーツカー・チャレンジのトラックアクティビティ走行中、カモフラージュデザインに身を包んでいる。

***アクション・エクスプレス・レーシング(AXR)は、2023年にGTPチャンピオンを獲得したことで今年のル・マン24時間レースへの自動招待を獲得しているが、現在はACOフランス西部自動車クラブからの公式確認を待っているタイミングであり、レースの準備が完了できていない。

***AXRのチームマネジャーであるゲイリー・ネルソンは、「まずは招待を受けなければならない。正式な招待状を見ると、いつも気分が良くなるんだ」とSportscar365に語った。「私たちはル・マンを走りたいし、いつかメールを開けるのを楽しみにしている」

***ポルシェLMDhのファクトリーディレクターであるウルス・クラトルは、フェラーリの『499Pモディフィカータ』に似たポルシェ963のサーキットデイバージョンが将来登場する可能性は「排除できない」としながらも、ドイツのメーカーとしてはまだ議論していないことだと述べた。「絶対に実現しないとは言わないが、今のところ、我々は今あるもので充分に忙しい」と彼は語った。

***ウェイン・テイラーは、WTRが2年前に購入した1977年のF1マシン『ウルフWR1』のステアリングを握り、今年のモナコ・ヒストリックGPに参加する。ジョディ・シェクターとケケ・ロズベルグがドライブしていたこのマシンはフルレストアされた後、南アフリカ人のドライブに備えてインディアナ州のパットナムパークでラップされた。

***来週末にデイトナで開幕するマツダMX-5カップは、ウィーレン・エンジニアリングが新たなタイトルスポンサーとなり、ミシュランは子会社のBFグッドリッチで今後数年間のシングルメイク・シリーズのオフィシャル・タイヤサプライヤーとなった。

5号車ポルシェ963(プロトン・コンペティション)とロスマンズカラーをイメージしたリバリーをまとう81号車オレカ07・ギブソン(ドラゴンスピード) 2024年IMSA公式テスト
44号車アストンマーティン・バンテージGT3エボ(マグナス・レーシング) 2024年IMSA公式テスト
宮田莉朋も乗り込む12号車レクサスRC F GT3(バッサー・サリバン) 2024年IMSA公式テスト

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