〈1.1大震災〉国重文「中谷家」傾く 能登・黒川、全壊免れるも

地震で大きな被害を受けた中谷家住宅=17日、能登町黒川

 国重要文化財に指定されている能登町黒川の「中谷(なかたに)家住宅」が地震で建物全体が傾き、壁が崩れるなどの大きな被害が出ていることが分かった。倒壊は免れたが、修復には財源や職人の確保などの課題が多く、復旧のめどが立たない。

 所有者で12代当主の中谷直之さん(65)=金沢市みずき1丁目=が17日、現地で被害状況を確認した。

 中谷さんによると、建物全体が北の道路側に傾き、基礎が沈下していた。1721(享保6)年に建てられた主屋(おもや)は玄関上部のケヤキの梁(はり)に目立った被害は見られなかったが、周囲の漆喰(しっくい)ははがれ落ち、扉は開かなくなった。

 通用門は倒壊し、東塀は石垣が崩落。土蔵は大きく傾き、漆喰は剝離していた。輪島塗職人が黒と朱の漆で柱や壁板などを塗り分けた国内最古級の「塗蔵」は原形をほぼとどめていた。奉公人部屋は倒壊の恐れがあるという。

 中谷さんは「何とかしたいが、どうしていいか分からない状態。被災者の生活再建の後に考えることになるだろう」と話した。

  ●古文書破棄しないで 町教委が呼び掛け

 能登町教委は地域の歴史や文化に関する史料の廃棄や散逸を防ぐため、家屋などに保管されている戦前までの古文書を破棄しないよう呼び掛けている。指定文化財が損傷するなどした場合も連絡を求めている。

 ★中谷家住宅 主屋、離(はなれ)座敷、土蔵、奉公人部屋および東塀、正面門の計5棟が2022年に重要文化財に指定された。江戸中期に建てられた大型の民家で、幕府直轄の天領だった黒川地区で司法や行政権が与えられていた「天領庄屋」として栄えた姿を伝える。

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