「新種の昆虫化石、とうとう出た」 那須塩原の30万年前の地層 授業中に横浜の元高校生が発見

那須塩原市の地層から見つかったセンチコガネ科の新種「ヤタガイツノセンチコガネ」(相場教諭提供)

 栃木県那須塩原市中塩原の約30万年前の地層から見つかった昆虫化石が、センチコガネ科の新種だとする研究結果を慶応義塾幼稚舎(東京都渋谷区)の相場博明(あいばひろあき)教諭(65)らがまとめ、21日までに日本古生物学会の国際誌で発表した。同所での新種の昆虫化石の発見は初めてで、相場教諭は「塩原は多くの化石が産出されることで知られ、いつかは新種が出ると思っていたが、とうとう出たか」と発見を喜ぶ。

 新種が見つかったのは、「木の葉化石園」で採れた岩石の中。同園の岩石を用いて授業を行っている慶応義塾高(横浜市)で2022年9月、当時3年の八谷航太(やたがいこうた)さんが岩石を割ると、体長約25ミリの昆虫の体を完璧に近い状態で発見した。

 古生物学を専門とする相場教諭が研究を引き継ぎ、大顎などの形から、コガネムシの仲間であるセンチコガネ科のセラトフィウス属であり、新種の可能性が高いことまで突き止めた。

 セラトフィウス属はこれまで日本で確認されておらず、国内では研究が難しいため、チェコの専門家に協力を依頼。研究の結果、新種であることが明らかになり、八谷さんの名前が入った学名「セラトフィウス・ヤタガイイ」、和名「ヤタガイツノセンチコガネ」と名付けられた。

 相場さんは「セラトフィウス属は、現代では高地で乾燥しているモンゴルやヒマラヤに分布している。30万年前の日本は湿潤だったと考えられており、30万年前と現在の分布は全く違っていた可能性が考えられる」と指摘する。

 今回は更新世のチバニアンに当たる地層から見つかり、世界で最も新しい時代のセンチコガネ科の化石だという。

 相場さんは「木の葉化石園では明治時代から現在まで、多くの岩石が割られている。そんな中、偶然にも慶応義塾高の授業中に新種が見つかったということはまさに奇跡的な出来事だ」と驚いている。

© 株式会社下野新聞社