レイラ - レイラとあなたの美しい再生ストーリーを描いたNEW EP『つづく』リリース!

予定が入りすぎてて「解散しよう」とか話にも出てこなかった

──EPのお話を伺う前に、前回のWWWワンマン(2021年7月『東名阪”World” tour 2021』ファイナル)から今日までの約2年半の間のお話を先に伺いたいと思います。このときはまだメンバー4人だったわけですが、それまでのレイラの幅を広げた『World』というアルバムを出してライブをやって、手応えは感じていたんですか?

有明:まずコロナ禍で、ステージの先頭から自分たちが立っているところまで距離があったし、前2列ぐらい椅子だったんですよね。声出しもNGで。手応えはあったけど、もうちょっとやりたかったなっていうか、日常に戻った状態でまたやったらどうなるんだろうって思いました。

みうら:前回のWWWは、自分たち発信で決めたわけじゃないんですよ。当時お世話になっていた人に「WWWやってみようよ」って言われて。あんまり現実味がないというか、達成感はなかったです。

──その後にメンバーが2人脱退されてバンドの危機だったと思うのですが、当時のメンタルやバンドの状態はどうでした?

有明:1回目はもうびっくりしすぎて「え?」って。ヤバかった。しかも「じゃあ今日もう脱退です」っていう急なパターンだったんで、心の準備もなかったんで、浸ってたよね結構。脱退の翌日が名古屋遠征で、当初3人で車で「マジか…」みたいな(笑)。

みうら:ずーっとその話してたよね。

有明:LOFTの大塚(智昭)さんが心配して、わざわざ一緒に車に乗って名古屋まで来てくれたんです。すごい仕事いっぱいあったのに。慰めてくれたわけでもないけど、支えてくれました。それで、3人で続けていく中で熱量の差みたいなのがあってもう1人も抜けていったんですけど、薄々感づいてた部分はありました。1回目よりはダメージ少なかったけど、2人になってからシンプルに人数が少ないからやることが多すぎて。

──2人になって、どういう話し合いをしたんですか?

有明:逆にもうすごい予定が決まっていたんですよね。LOFTで『喧嘩』っていう企画を初めてやるのも決まってて。予定が入りすぎてて「解散しよう」とか話にも出てこなかったし。ただ続ける感じ。「2人になったから」っていうよりは「レイラをどうしていこう?」みたいな感じの話をしていました。

みうら:でもやっぱ、要所要所で悲しいときっていうのはあるんですけど、考える暇もなかったです。いいライブができなかった日に大体そういう話をしていました。

──去年は曲のリリースもして、「LOFT大賞ください!」ってTwitterで言うぐらいLOFTグループの店舗だけでもかなりの本数出演されていましたが、今振り返ってどうですか? 印象に残っているライブなどありますか?

有明:全部印象に残ってる。コロナの規制が5月ぐらいからなくなってお客さんの熱量もどんどん上がっていったし、それを見て私たちがもらうものもあったし。『喧嘩』も先輩の背中を見たからこそ、自分たちはどういうライブをしたらいいんだろうとか思えたしね。

みうら:全部ですね。サポートメンバーと一緒にやるのもなかなか難しいんで、ライブの本数を絞っていた時期もあるんですけど。2023年はたくさんライブして、今の2人のレイラを見せようっていう気持ちになってめちゃくちゃやろうとしたら、やりすぎました(笑)。

有明:みんな呆れてたよね。「企画やりすぎだよ」って(笑)。本当に悔いないぐらい頑張りました、2023年は。

もちろん、レイラが「つづく」っていう意味もあるんですけど…

──EPのお話に移りたいのですが、このジャケットめちゃくちゃいいですね(笑)。

みうら:これはいちばん有明的になしだったんです(笑)。

有明:写ルンですで自分たちで撮ったんですよ。フィルムを減らすために無駄な写真もいっぱい撮ってて、その中の一枚です。ドーナツを食べているところです。

──生命力を感じますよね(笑)。

有明:すっぴんだからありえないって思ってたんですけど、いろんな人から「ポジティブな力を感じる」って言われて。確かに、顔出ししないで紅白とか出る人がいる中すっぴんをジャケにするって、それこそタイトルの『つづく』の覚悟、“続ける”っていう覚悟かなって、半分押されてこれにしました(笑)。

──今回のEP『つづく』は、4曲全てがとにかく美しいですよね。1曲の中にも、4曲通しての流れとしても明確なストーリー性があって非常に映像的です。傷つき、再生し、未来に向かって勢いよく突き進んでいく姿が、2年半前から未来へ向かっていくレイラのストーリーと重なります。最初からこういうストーリー性のあるEPを作ろうと思っていたんですか?

有明:全く思ってないよね。でも、「透明少女」以外はメンバーが抜けてから作った曲なんで、それ以降と以前で結構人間が変わったんで、そうなっちゃう部分があるかもしれないですね。

みうら:メンバーが抜けて離れてしまったお客さんもいたので、変わっちゃったなって思われないために、もともとあった良さを出せたらいいなって思って作ったんですけど、完成したら全く違う新しいものになりました。

──そうなんですね。1曲ずつお聞きしたいのですが、まず1曲目の「Rainy day」。これは最初、逆再生の音で始まって、雨の音や和風なメロディーで情緒がある感傷的な曲ですね。エモ、シューゲイザー、ポストロック、マスロック的な要素が詰まった曲調ですが、この曲はどうやって生まれたんですか?

有明:原石みたいな状態が一年ぐらいあったんですけど、世に出すタイミングがずっとなかったんです。雨の曲なんですけど。逆再生とかのアコギのリフみたいなのを作りたくて。それで、キャッチーなメロがいいなって思って和風なメロディー作って。レコーディングで歌う直前に歌詞が完成しました。

──「明日に追いつかれない様に息をしてる」っていう言葉がすごく引っかかります。「追いつかない」より逃避感が強いですね。

有明:ここだけは最初から変えてないんです。「生きてるだけで精一杯」みたいなことを伝えられたらいいなって思って。みうらには「意味が分からないけど、耳には引っかかるね」って言われました(笑)。

みうら:このフレーズはすごくいいけど、ここだけだとあんまり共感されないんじゃないかなって思って、2行目の「やまない雨よ流してこの憂鬱をさ」で曲の世界観を説明する歌詞にしようって話し合いました。

──2曲目の「このまま」は、ドリームポップ、サーフロックみたいな明るい曲調ですけど、歌詞が鬱屈してる。

有明:そのときの自分の生活そのまんまだったんで、1番までは10分ぐらいで完成してしばらく眠ってたんですよ。そうしたら、『喧嘩 round5』でFINLANDSと対バンしたんですけど、その頃はもう毎月企画とかやって疲れてて、それ以外の生活がおろそかになっていたんですけど、会場入りしたらボーカルの(塩入)冬湖さんがめっちゃ美しくて。顔も髪型もめっちゃ綺麗で、完璧な状態。私はすっぴんで髪ボサボサで何もしてない状態で。お子さんもいらっしゃってすごいって思ったら、「生活を言い訳に綺麗を諦めて写ってる鏡越しの自分は 中身まで見透かされてるみたいだった」っていう歌詞が思いついたんです。だからSHELTERで冬湖さんを見て完成した曲です(笑)。

──バンドマンだけでなく、いろんな人が共感する歌詞ですよね。

みうら:このEPの軸になっている曲ですね。

有明:この曲だけはEPに入れるのずっと決めていたんです。『つづく』っていうタイトルも、この曲の主人公の生活が続いていくイメージで最初つけました。もちろん、レイラがつづくっていう意味もあるんですけど。

──そして、先日先行配信された3曲目の「kadode」。これはとにかく美しくて、救済されていく、昇っていくみたいな。中盤の歌詞がないところは女神様みたいなイメージです。

有明:これは、バンドをやっていた友達がバンド辞めて就職するっていう出来事があって、その友達に向けて書きました。バンドにかかわらず、環境が変わる人って時期的にも多いだろうなって思って。

──最初の2行、「夢から逃げた君と 現実から逃げた私」など、脱退したメンバーさんに向けて書かれているのかと思いました。

有明:そうも捉えられるだろうなって思いながら書いていましたね。私は大学を中退してるんですけど、その友達は3年間フリーターをした後に大学入ったんですよ。真逆な2人のことを書きました。

──最後の「ねえ 今更何を思い出しているの ため息では消えない日々を胸に抱いてゆけ」はどういう気持ちで書いたんですか?

有明:時々その友達は「これでいいのかな?」って言うんですよ。「やっぱり夢を追っている人に魅力を感じる」みたいなことを言うから、前向きに生きなって。本当は「バンドやろうぜ!」って今すぐにでも言いたいんですけど(笑)。「ため息では消えない日々を胸に抱いてゆけ」は、それぐらい記憶に残っている大事な思い出を忘れないでこれからの生活を頑張ってね、みたいなメッセージ。

みうら:この曲は歌詞で言うと、否定も肯定もしない曲で。「考えるのもうやめたい」とかもそうなんですけど、ポジティブなメッセージとか、前を向いてほしいとかじゃなく、ただ気持ちがそこにあるっていうのを表現している、すごい良い曲だなって思います(笑)。レイラ的にも異質というか。これどうやってライブでやるんだろう?(笑)

有明:まだ考えてない(笑)。

──すごく綺麗な曲ですよね。本当に救われるっていう感じ。

有明:もともと綺麗な曲が好きなんです。それをあまり初期の頃はレイラに落とし込むことができなかったんですけど、今はお互い理解が深まってできるようになって。『つづく』が綺麗なEPになったのも、お互いの理解が深まって表現することができるようになったからっていうのもちょっとあるかもしれないです。

──最後の「透明少女」は昔からライブではやっている曲ですよね。

有明:2018年ぐらいからあるよね。

みうら:SHELTERで初めてのワンマンをやったときに音源を無料配布したんです。

有明:あと、初めて『いとしの令和』やったときに、コンピレーションアルバムを作って、それにも一応入ってて。でも、持ってる人がこの世に極端に少ない(笑)。

みうら:クラウドファンディングの特典にも入っていたんですけど、その音源とはまた別でレコーディングし直しました。五弦ベースで弾いていて、ベースとドラムのフレーズが結構違う。現代バージョンになっています。

──みうらさんが作詞作曲されているんですよね。これは全肯定の曲ですね。

みうら:これ作った当時は結構後ろ向きな曲が多かったので、応援ソングじゃないですけど、勇気付けるような曲を作りたいなと思って作りました。誰かを勇気付けたいっていうよりかは、自分が言われたい言葉を言っていますね。

──この曲は疾走感があって、ライブでも盛り上がりますよね。

みうら:一番最後の「Wo〜♪」っていうボーカルのフェイクがあるんですけど、作ったときには入ってなくて。2018年の北海道で初めてライブしたときに初披露したんですけど、キーが高いんですよね。有明がこの高いフェイクを地声でバッて歌った瞬間に、すごいなって。そのライブでこの曲の在り方が決まったっていう感じがしました。

有明:この曲、未だに高いなって思う。最後のほうにやることが多いから「出し切ってやるぞ!」みたいな、「最後まで気抜かないで頑張って自分!」って思いながら歌っています(笑)。

みうら:演奏的には200m走みたいな感じです。

──キツイですね(笑)。

やりたいと思ったことが全部できたEPですね

──改めてこの『つづく』、どうですか?

有明:傑作になったんじゃないかと思います。最初「このまま」だけしか決まっていなかったんで「『World』を越えれんのかな?」って不安がかなりあったんですけど、『World』とは違う系統でもう、越えた?(笑)

みうら:やりたいと思ったことが全部できたEPですね。

有明:ミックスでもめっちゃ遊べたんですよ。「Rainy day」とか「kadode」とか。それが結構楽しかったですね。

──2人でのレコーディングはどうでした?

みうら:サポートメンバーと一緒にやるんで、自分も演奏しながらやってくれるやつを聴くで、あんまり冷静な状態で聴けてないところがあって。今後課題だなって思ってたんですけど、今回は2人とも地元の横浜で出会った先輩方で、痒いところに手が届くっていうか。

有明:しかも、今回は「kadode」以外はライブでもベースを弾いてくれている奥田(一馬)さんで。だからライブのテンション感もすごい分かってくれるし、お兄ちゃん的な存在で、うちらがもぞもぞしてると仕切ってくれたんですよ。アレンジ面でも「こういう場面を変えたいんですけど」って言ったらパッてやってくれました。

みうら:散らかってるのをすごい片付けてくれた(笑)。

有明:だから、逆に頭数が増えたっていう(笑)。

僕は結構(新メンバー)入れたいなとは思うんですけど

──12月のライブのときに、ツアーの後のことは全然考えていないとおっしゃっていましたが、どうですか?

有明:考えてない(笑)。私個人は、ツアー終わって、好きな音楽作って好きなライブしよって思います(笑)。

みうら:2023年が走り抜けた年で、2024年で結果が出る年になったらいいなと思っています。まず、ツアーを成功させる。それ以降は何も決まってないです。

──今後メンバーが増える可能性はありますか?

有明:もう誰にも脱退してほしくないんで、今のところはまだ視野に入れてないですけど、運命的な出会いがあったらもしかしたらあるかな。

みうら:僕は結構入れたいなとは思うんですけど。でも、誰かが入るビジョンは見えてないですね。

──『つづく』のリリースと、ツアーに向けて一言ずつお願いします!

みうら:昔から知ってる人も「今が一番いい」って言ってくれる人が多いし、いいライブに見合うCDができたんで、「いつか」じゃなくてこのツアーに来てほしいです。

有明:レイラ史上最高のEPができました。このEPを手で持って届けに行くので、よかったらみなさん来てください。ライブもレイラ史上一番いいライブをして帰ります。2人になってもレイラは続きます!

© 有限会社ルーフトップ