●ナマコ入らず、作業場崩れ
穴水町中居地区で古くから続いてきた高級珍味「クチコ」「コノワタ」作りが困難な状況となっている。地震で被災した漁業者から原料のナマコを仕入れられず、内蔵を取り出す作業などを担う地元の主婦たちも被害に遭った。能登を襲った大地震は伝統的な食文化にも打撃を与えている。
中居では、地元で水揚げされたナマコの腸を塩辛にしたコノワタ、卵巣と精巣を天日に干したクチコが特産品だ。寒干しされたクチコが冬の日差しに照らされて鮮やかな山吹色を放つ光景は冬の風物詩でもある。
中居南の森川仁右ヱ門(じんうえもん)商店の森川仁久郎さん(78)によると、ナマコをさばいて内臓やエラなどを取り出す作業場の一部の屋根が崩落し、敷地内の地面には多数の亀裂が入った。
例年ならコノワタやクチコともに本格的な生産に入っている時期だが、ナマコの入荷は見通せず、作業に携わる主婦たちも生産どころではないという。森川さんも手の打ちようがなく、「今年はもう無理やろ。元に戻るには3年は掛かるかもしれん」と肩を落とした。