職人技に心躍らせ 前田家庇護の工芸美 高岡、金沢でモニターツアー

たたき青銅色やガス青銅色で着色した銅版を眺める参加者=高岡市長江のモメンタムファクトリー・Orii

  ●石川の参加者歴史文化体感

 加賀藩文化を共有する高岡市と金沢市が連携し、前田家ゆかりの歴史・文化を体感する広域観光のモニターツアーは22日、両市で行われた。石川の参加者が高岡銅器や加賀象嵌(ぞうがん)といった前田家の庇護のもと花開いた伝統工芸の美に触れた。創意工夫をこらしながら現代に息づく職人技を間近で眺め、心を躍らせた。

 銅器着色メーカー「モメンタムファクトリー・Orii」(高岡市長江)では、職人の蔦恵実さん(28)が、加賀藩前田家2代前田利長が高岡に鋳物師(いもじ)を呼び寄せ発展した銅器産業の歴史と着色技法を紹介した。

 同社は厚さ1ミリ以下の銅板への着色技法を開発したことで、鋳物だけでなく建材やクラフト品など幅広い商品展開を行っている。

 蔦さんは工房で、薬品や熱で金属の表面を着色する技を実演した。

 銅版にぬかを塗ってバーナーで熱する「ぬか焼き」や、薬品を塗って青いさびをつける「たたき青銅色」、アンモニアに触れさせることで鮮やかな青を発色させる「ガス青銅色」などをやって見せ、参加者は写真を撮りながら眺めた。

 五十嵐裕子さん(71)=能美市松が岡=は「いろんな可能性に挑戦して新たな美を目指す姿に感動した」と話した。平野一代さん(80)=かほく市高松=は「子どものように技に見入った。伝統工芸品を身近に置くなどしてものづくり産業を応援したい」と語った。

 一行は、金沢市北陽台3丁目の「宗桂会館」で加賀象嵌の技法に触れた。

 加賀象嵌を支援する宗桂会を創設した日機装(東京)は、創業者の音桂二郎氏が加賀藩御用の象嵌職人、初代山川孝次の子孫に当たる。会館には初代から3代までの逸品や藩政期の馬具、刀装具類が並び、一行は技の細部に目を凝らした。

 加賀象嵌作家の前田真知子さん(42)が、室町時代から伝わる「煮色着色」を実演し、加賀象嵌を施した銅合金が薬液で発色すると、参加者から「きれい」と感嘆の声が漏れた。大根おろしを使う工程も興味を引いた。

 母の実家が小矢部市にあるという川島一美さん(65)=金沢市金石東3丁目=は「ツアーを通じて加賀藩の縁を実感できた。技法を深く知ることで、これから作品を見る目が変わりそう」と話した。

 金沢市と高岡市は、加賀藩や前田家ゆかりの歴史文化を体感できる広域観光ルートの構築に向け、2月17日に「高岡・金沢 広域観光シンポジウム」(両市と富山新聞社、北國新聞社主催)を高岡市生涯学習センターホールで開催する。

 シンポジウムは午後2時からで聴講は無料。申し込みは北國新聞イベントガイド=https://hk-event.jp=の申し込みフォームで受け付ける。締め切りは2月2日。問い合わせは富山新聞社営業事業部=076(491)8118=、富山新聞社高岡支社=0766(23)2131=まで。

煮色着色の実演に見入る参加者=金沢市北陽台の宗桂会館

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