『フェアレディZ(JGTC GT300/2003年)』アメリカ向けから転用された初年度戴冠車【忘れがたき銘車たち】

 モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは2003年に全日本GT選手権のGT300クラスを戦った『ニッサン・フェアレディZ』です。

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 全日本GT選手権(JGTC)のGT300クラスにおいて、ニスモはニッサン・シルビアをベースにGT300マシンを開発し、ニッサン系のユーザーへ供給していたが、2003年にそのベースマシンが変更されることとなった。それがZ33型の『ニッサン・フェアレディZ』だ。

 2002年に市販車が登場したZ33型の『フェアレディZ』は、それとほぼ同時期にレーシングカーとしての開発も進められて、そもそもアメリカン・ル・マン・シリーズ(ALMS)への参戦が予定されていた。

 しかしALMSの計画が中止となり、急遽ALMS向けに開発されていた『Z』がGT300用へと転用されることになった。そのため、GT300を走っていた『Z』は左ハンドルなのも特徴のひとつだった。

 ただ最大で24時間レースを走り切ることも視野に入れて開発が進められていたため、モノコックなどJGTCの規定に合わせた改造をニスモが施していたが、耐久性のマージンを大きくとっていたためにJGTC車両としては車重が重いことがネックだった。

 また、ターンインでノーズが入らないことや、リヤのトラクションが不足していたことも実戦を戦い始めると課題だとわかり、それを2003年に『Z』を走らせたハセミモータースポーツが改良を重ねて進化をさせていった。

 足回りのジオメトリーは幾度も変更が施され、FIA-GT仕様ともいえたフロントのサスペンションをハセミのオリジナルにモディファイ。

 エンジンもリストリクターの規定を考慮して、3.6リッターから3.5リッターに排気量ダウンされたほか、24時間レースを意識してオーバークオリティだったブレーキキャリパーのうちリヤをエンドレス製に変えるなど、レースを重ねるごとにJGTC用へと洗練された。

 その結果、ハセミの『Z』は優勝こそ挙げられなかったものの、全8戦中4戦で表彰台に登壇するなど安定してポイントをゲットし、見事、デビューイヤーながらチャンピオンを獲得したのだった。

 そして、GT300の『Z』は2004年以降、長きに渡って活躍を続けることになる。

木下みつひろと柳田真孝がドライブし、2003年の全日本GT選手権開幕戦TIサーキットを戦ったハセミスポーツ・エンドレス・Z。

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