「未解決事件は終わらせないといけないから」プレイレポート!2~3時間ほどでクリアできる傑作ノベルゲーム

結論から言おう。本作は、とてつもなくおもしろいノベルゲームだ。今、あなたがおもしろいノベルゲームを探しているのであれば、ここで記事を読むのを止め、すぐにでも本作をプレイしてほしい。

早くて2時間、遅くても5時間ぐらいで終わるゲームなので、悩むのはもったいない。とにかく遊んでもらいたい。

とはいえ、概要を説明しないわけにはいかないだろう。以下であらすじを紹介しよう。その後に本作が持つ魅力を解説するが、できればこの部分も実際にプレイして「おもしろい」と感じてもらいたいと思っている。

ノベルゲームのおもしろさはシナリオの良さが重要であるが、本作はシナリオとゲームシステムの結びつきが強い。それ自体はとても素晴らしいことだが、記事で要素を紹介するとなると少なからずネタバレになってしまうので注意してほしい。

「未解決事件は終わらせないといけないから」の主人公は、12年前に警察を退職した“清崎蒼”。彼女の前にひとりの若い警官が現れ、清崎蒼の携わった最後の事件で未解決に終わった“犀華ちゃん行方不明事件”の捜査の協力を依頼しにくるというものになっている。

主人公は事件の記憶を思い出すことになるが、おもしろいのは証言の時系列や語り手がバラバラとなっており、プレイヤーが組み直していくところだ。

膨大な情報を組み直すことに対して筆者も最初は躊躇したが、プレイヤーが考えやすいように思考を違和感に誘導してくれる作りになっているし、ゲームのUIや操作も快適でのめり込むことができる。

証言はSNSのタイムラインのように表示されるが、最初は明らかに一人称が違う発言など分かりやすいものから区分けることができるし、そうやって進めることで事件全体の概要が分かってきて「ここはミスリードになっているのではないか」と、見つけるのが難しい間違いにも気付けるようになってくる。

また、証言に関してはブロックの形で構成されており、最初は表示されていなかったり見えていなかったりという状態になっている。

証言のなかに#公園や#幼稚園、#誘拐といったタグがあり、そのタグを持った発言をすると関連した証言が開く(記憶を思い出す)という流れになっている。いわゆるザッピングシステムとなっており、ゲームを進めることでだんだんと情報が広がっていく作りなので、行き詰まってしまうことは少ないはずだ。

ヒントの色分けが分かりやすくて親切だったり、クリックすることですぐにその場に飛べたりと、ストレスフリーなシステムになっている点もうれしい。

ザッピングでつながったとはいえ、そのザッピングした先の発言が本人とは限らないところが本作ならでは。新しく開示されたブロックに対して、誰のどの時間の発言か考える楽しみがある。

ザッピング自体は「サウンドノベル 街 -machi-」や「EVE burst error」からはじまり、「SIREN」「Will -素晴らしき世界-」などで応用されてきたが、筆者は本作にその進化と、現段階での到達点を感じた。物語のはじまりと結末だけが描かれたストーリーの間を埋めていく作業は興味心を刺激され、楽しい時間を過ごせた。

キャラクターのプロフィールなど、名前や役職などの一部が隠されていたものが明らかになるタイミングもよくできており、プレイヤーを飽きさせない。

また、時系列を正しく並べるとブロックがつながり、ひとつのブロックになるので情報も整理しやすい。ブロックを6回つなげると黄色い鍵が手に入り、ロックが掛かった証言を解除することが可能。そのため、プレイヤーがテキストをしっかり読み、物語を理解するように作られたシステムもうまい。本作はストーリー部分とシステム部分が見事にかみ合っているところも評価点だ。

単語で連想するという意味では、似たシステムにインディゲームの「Her Story」もあるが、本作はノベルゲームならではの没入感が大事にされており、分かりやすくプレイヤーの心情を盛り上げていく内容。どちらのゲームも素晴らしいものの、プレイヤーに委ねる部分が多い「Her Story」よりもストーリードリブンになっている本作のほうが筆者は好みだ。

しらみつぶしにタグをクリックすることで、ある程度ゲームを進めることができるが、なかには根拠となる情報を選ぶものだったり、日付を入力するものもあるので、ゲームをしっかり理解しないとクリアできない仕組みになっている。ほどよく悩まされる難易度もちょうどいい。

BGMやビジュアルなどはフルプライスの作品と比べればボリュームは抑えめになっているが、ここぞというタイミングで表示されるビジュアルや、切り替わるBGMはプレイの質を高めてくれる。ぜひ、ひとりで集中して遊んでみてもらいたい。

「リーガルダンジョン」「Replica」をプレイしていた筆者は、その作者であるSomi氏の新作ということでもとから期待していたが、予想を超えて素晴らしい作品だった。ストーリーの内容に関しては記述しないが、次々に明らかになっていく真実、そしてラストの展開はとても胸を打った。ぜひ多くの人が遊んでくれることを願う。

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