異例の“正式発表前にレースデビュー”。アストンマーティンの新型GT3は「ジェントルマンに良い」

 アストンマーティンは、正式名称未定の新型GT3モデルをIMSAウェザーテック・スポーツカー選手権に投入している。すでに1月19〜21日には公式テスト『ロア・ビフォア・ザ・ロレックス』において公式セッションでの走行を開始、1月27〜28日には第1戦デイトナ24時間レースの決勝を控えている。

 既報のとおり、この車両の正式なお披露目は2月12日、イギリス・シルバーストンで開催されるイベントで、2024年型F1マシンの発表とともに行われるものと理解されている。

 デイトナの公式なエントリーリストやリザルト上で『アストンマーティン・バンテージGT3 Evo』と表記されているこの車両を走らせるハート・オブ・レーシングのロス・ガンは、デビュー戦における困難について「幻想を抱いていない」という。

 2018年にデビューした先代のバンテージGT3と比較すると、今回アップデートされた新型では、主に空力の部分で大幅な変化が見られる。

「我々はそれについて多くのことを学んでいるところだ」とガンはSportscar365に対し語った。

「多くの点でかなり違う。これはまた、バンテージではあるけどね」

「僕らクリスマス前にここ(デイトナ)で非常に着実なテストを行った。レースという意味では、今回初めてここにマシンを持ち込めることにとても興奮しているよ」

「でも、僕らはまだ多くのことを学んでいる最中なので、デビュー戦がどれほど難しいかについても、幻想を抱いてはいない」

2024年型(Evo)と2023年までのアストンマーティン・バンテージGT3の比較
2024年型(Evo)と2023年までのアストンマーティン・バンテージGT3の比較

 アストンマーティンのファクトリードライバーであるガンは2024年、ハート・オブ・レーシングの23号車のエントリーでアレックス・リベラスとコンビを組んでGTDプロクラスにフル参戦する。さらに長距離戦のミシュラン・エンデュランス・カップでは、マリオ・ファーンバッハーが加わる。

 この23号車はデイトナでデビューする3台の新車、またはアップデートされたアストンマーティンのGT3車両のうちの1台となる。ハート・オブ・レーシングはGTDにも1台を投入するほか、マグナス・レーシングも1台をGTDにエントリーさせている。

 変動要因を考慮すると、チームは開幕戦に向けて現実的な期待を抱く必要があるとガンは指摘している。

「もちろん僕ら全員は勝つためにここにいるけど、現実的に考えて、もっとも重要なのは学ぶことだ」とガンは語った。

「残りのシーズンに向けてクルマを学び、クリーンな形でレースを終えることができれば、本当に良いスタートになるだろう」

「新車は通常、学習するのに時間がかかるし、デイトナは潜在的にその機会として利用すべきレースであるという点で、現実的になる必要がある」

「正直に言えば、予選日になれば自分たちの状況がもう少し分かると思うが(※編註:結果的にはクラス11番手)、現実的になり、目の前の仕事に集中したいと思っている」

 新型アストンにはジェントルマンドライバーにより適した多くの改良が加えられており、これは世界中のプロ/アマレースで利益を得るであろうと、ガンは言う。

「今日のGT3レースにおいて非常に大きなことは、多くのメーカーが広いワーキング・ウインドウを備えたクルマを追求していることだと思う」とガン。

「僕らはその分野で、多くの進歩を遂げることができたと間違いなく思っている」

「先代は非常に速いクルマだったけど、現在のマシンよりもウインドウは狭かった」

「それを考えると、(新型は)ジェントルマンドライバーにとっては良い一歩になると思う」

デイトナで併催されるミシュラン・パイロット・チャレンジにレベル・ロック・レーシングが送り込んでいるアストンマーティンの新型GT4車両には、カモフラージュ柄が施されている。

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