英語で落語、外国人に発信 高橋さん(山形)、先月初の寄席

英語で落語を披露する高橋佳奈子さん=山形市・清風荘

 アマチュア落語家「餡団亭和緒(あんだんていわお)」として活動する山形市在住の高橋佳奈子さん(43)が英語での落語に挑戦している。米ニューヨーク生まれで英語が堪能な高橋さんは、日本映画を英訳する「映像翻訳者」としての顔も持ち、落語の英訳も自ら手がける。「落語は庶民の笑い。肩肘張らずに日本文化を感じる入り口になれればいい」と話す。

 高橋さんは9歳までニューヨークで過ごした。青山学院大在学中にシアトル留学も経験。卒業後に結婚し、10年ほど前に本県に移住した。得意の英語を生かし和訳の仕事をしていたが、「せっかくなら日本のものを発信したい」と、新型コロナ禍にオンライン受講で日英映像翻訳を学んだ。

 落語を始めたのは本県移住後。当時小学4年だった長男の教科書に載っていた落語「ぞろぞろ」から興味を持った。息子と落語会に行き、日本独特の感性が生み出す笑いと奥深さに魅了され、その場で山形落語愛好協会に入会した。落語の際の名前は好きな食べ物(あんこと団子)に加え、口癖の「ワオ」にちなんだ。

 英語落語は落語を始めてすぐの頃に動画を見つけ、「いつかやってみたい」と思っていた。山形市国際交流センターの知人からの誘いで先月、県内在住の外国人を前に初めて披露した。演目は時代背景などを知らずとも楽しめる「動物園」を選んだ。

 面白みが自然に伝わるよう自ら台本を英訳。虎になりきる小僧を演じ、会場を笑いに包んだ。トリニダード・トバゴ出身のコシ・レジスさん(23)は「英語なのでより楽しめた。日本の伝統芸能に近づけた感じがする」と話した。

 「日本語ならではの表現をいかに英語で伝えるか考えるのが楽しい。日本人と笑う所が違うなど、間の取り方が勉強になった」と高橋さん。上演翌日にプロの高座を見に行った人や、「やってみたい」と言ってくれた外国人もいたといい、「英語落語から日本文化に興味を持ってもらえてうれしい。一緒にやるのも面白いかも」と意欲を見せた。

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