「銀治郎を忘れないで」 13歳で犠牲に、受け止められず

 石川県能登町立松波中1年の森銀治郎さん(13)は、能登半島地震で自宅が倒壊し、亡くなった。担任の玉置海斗教諭(26)は「ユーモアがあり、学年に関係なく、生徒から好かれていた」と人柄を語る。ソフトテニス部に所属し、団体戦でも活躍した「将来のエース」。森さんを知る人たちは約3週間たった今も現実を受け止められないでいる。

 「森君の安否が分からない。命を落としているかもしれない」。中社進校長(60)は地震発生翌日、避難所で町の教育長が発した言葉にがくぜんとした。

 中社校長が森さんと再会したのは葬儀場だった。「ソフトテニスがんばったね」「兄弟に優しくしたね」。息子の無事を祈り続けた母親。途切れ途切れに話しかける声が中社校長の耳に残る。ひつぎには愛用のテニスシューズと好きだったお菓子が納められた。

 火葬後、骨つぼを抱えた母親と向かったのは、松波中だった。母親から「銀治郎に学校とお別れをさせてあげたい」と頼まれたという。母親は声を震わせながら、言葉をつないだ。「銀治郎がいたことを、忘れないであげてください」

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