野球場で「野球“以外”しようぜ」 グラウンド「閑古鳥」で収入減、京都市が苦肉のPR

京都市役所

 京都市が野球場で「野球“以外”しようぜ」と呼びかけている。米大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手が全国の小学生に約6万個のグラブ寄贈し、子どもたちに再び野球熱が高まりつつ中、市はなぜ水を差すかのようなPRを行っているのか。背景には公共施設の値上げや補助金カットが相次いだ市の深刻な財政難がある。

野球人口は年々減少

 

 公益財団法人・笹川スポーツ財団(東京)の調査によると、年1回以上プレーする20歳以上の野球人口(推計)は268万人(2022年)で、00年の597万人から半減している。市内では野球場の利用率も減少し、特に平日の利用者低迷が目立っていた。

 市は「このままでは財政破綻しかねない」(門川大作市長)という財政難に陥り、21年8月、行財政改革計画を策定。敬老乗車証などの公共料金値上げや補助金カットとともに、公共施設の有効活用・利用促進を明記し、使用料金の収入アップを盛り込んだ。これに基づき、使用率が低迷する野球場を野球以外に使ってもらうことで、財政難解決に役立てようという訳だ。

ピッチャーマウンドが邪魔で…

 

 手始めに22年11月から東野公園(山科区)、勧修寺公園(同)、小畑川中央公園(西京区)、三栖公園(伏見区)の各野球場で、野球やソフトボール以外の利用を認めた。しかし、他のスポーツをしようにも、野球場はピッチャーマウンドが盛り上がっているため使い勝手が悪く、「野球以外は地域の運動会など年に数回にとどまる」(市民スポーツ振興室)。2月からは利用拡大を目指して対象施設を増やすことになった。

 追加されるのは平日利用率が8~25%と特に低い吉祥院公園(南区)、横大路運動公園(伏見区)、牛ケ瀬公園(西京区)、一乗寺公園(左京区)。想定しているのはサッカーやラグビーなどのスポーツ競技や運動会、物産展といったイベント。利用は平日月~木曜(祝日や祝日前日は不可)。

野球以外できるのか

 

 市は「野球場という名称でも野球以外に使えることを周知したい」としており、主に外野部分を活用すれば、さまざまな使い方ができるとしている。他用途の予約が舞い込めば、草野球の試合などに影響が出ることも想定されるが、「土日・祝日などは野球専用を維持するため、野球ファンに迷惑はかからないはず」という。

 京都市の野球愛好家にも吹き始めた財政難の逆風。改善の兆しは見え始めたとはいえ、市には特別・企業会計を含め1兆5828億円(国が返済する臨時財政対策債を除く)の借金が残る。その額は大型契約で話題になった大谷選手の10年総額約1千億円の15倍超にあたる。

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