藤沢で半世紀、遊行通りの町中華「大和家」 閉店惜しむファンで連日行列

藤沢市民に愛された中華料理店「大和家」店主の中鉢清勝さん(左)と斐子さん夫妻=同市

 旧藤沢宿から藤沢駅へ向かう「遊行通り」の一角にたたずみ、半世紀にわたり藤沢市民に愛された中華料理店「大和家(やまとや)」(神奈川県藤沢市藤沢)が27日で店じまいする。閉店を知った常連やファンが駆け付け、店頭は連日行列に。2代目店主の中鉢清勝さん(78)は「お客さんに喜んでもらいたいとの一心で鍋を振ってきた」と振り返る。

 人気のギョーザは450円、ラーメン500円、サンマーメン600円とメニューには廉価な定番料理が並ぶ。創業は1973年。カウンター4席、テーブル3卓のこぢんまりとした店内は、ランチタイムや夜の時間帯は常に満席で、奥の座敷は常連客の御用達だ。

 中鉢さんが98年に先代の父から店を引き継いで以来、こだわり続けているのは、自己流のレシピと麺やギョーザの皮、あんをはじめとした手作りの素材だ。午後8時半の営業終了後、翌日の仕込みを始め、就寝は明け方。仮眠を取り、開店準備に取りかかり、わずかな休憩を挟んで、厨房(ちゅうぼう)に立ち続けた。

 この間、消費税率がアップし、昨今の物価高など店を取り巻く経営環境は厳しい。客から「この価格では大変だから、値上げして」との“逆提案”を受けることもしばしば。本人は多くを語らないが、家族は「お客さんに負担をかけたくないと、とにかく頑固」と話す。

 「あと3年は続けるつもりだった」という中鉢さん。しかし、入居する建物の老朽化が進み、区切りを付けることを決めた。

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