【リニア新幹線工事】環境への影響対策は出てから考えるのか出る前に予測するのか今後の争点に

リニア問題について国の有識者会議のメンバーと静岡県内の市長町長が意見交換をしました。環境への対策は影響が出てから考えるのか、出る前に考えるのか。それが大きな争点になっています。

島田市 染谷 絹代市長 21日:
「報告書について理解を深めることができた時間。流域市町の首長は誰一人リニアの工事に反対していない」

21日リニア新幹線工事の環境への影響を話し合う国の有識者会議の中村太士座長らと、非公開で意見交換を行った大井川流域の首長たち。

リニアをめぐっては12月、国の有識者会議が環境保全に関する「報告書」を国交大臣に提出しています。

この報告書についての国側との意見交換を終えた、島田市の染谷市長は・・・

島田市 染谷 絹代市長 :
「流域市町の要望で一番大きかったのは、今後、国はどう関与していくのか。住民に理解してもらえるような説明を重ねながら、工事の進ちょくをはかっていくことが静岡県の利益になるのでは」

難波静岡市長は

実は、この意見交換会の前、有識者会議の委員らの姿は静岡市役所にありました。

リニア有識者会議 中村太士座長 静岡市役所 21日:
「今回この報告書をまとめて、こういやって地元の人たちに説明するチャンスを与えてもらいありがとうございます」

静岡市 難波喬司市長:
「我々としても、とにかく適切な環境影響評価が必要なのでしっかりと報告書を勉強させてもらい、良い方向に進めていきたい」

冒頭のあいさつのみ公開された静岡市役所での意見交換会。

大井川流域の市長たちからは報告書への一定の理解を得られました
が、静岡市の難波市長は・・・

「南アルプスの自然環境の問題は複雑で、そして複合的・社会的にもいろんな影響がある問題なので、なかなか市の力だけでJR東海と議論をしていくのは厳しい。あとは土台(報告書)を基に我々が疑問に思っているところをJR東海と意見交換をして詰めていく」

大井川流域と同じように、報告書に一定の理解は示したものの、注文も忘れませんでした。

「今の報告書で言うと、(影響が)出たら考えましょう。となっているが、やはりそこは事前に考えたほうがいいのではないかと話をした」

その上で…。

「シミュレーションの不確実性が極めて高いので、それを評価して分かり切らないところをどうやって他の措置で補っていくのかをこれから考えていく必要があると思っている」

一方、有識者会議の中村座長は・・・

リニア有識者会議 中村太士座長 :
「不確実性の問題がすでにあるので、たぶんどれだけ時間をかけてもパーフェクトのものはできない。問題が起こったらそれに対処していくというスキームを考えていくのが一番大事。(静岡市にも)より建設的な議論を進めてもらえるとありがたい」

「工事実施前に生態系への影響を予測すべき」とした難波市長に対し、中村座長は「工事を進めながら、問題に対処していくべき」として、意見の食い違いが見られたのです。

川勝知事は

報告書をめぐる“考え”については、あの人も独自の見解を発信しています。

川勝知事 去年12月:
「トンネル掘削による流量の減少が予測される沢周辺の生態系について、どのような影響が生じる可能性があるか、事前に予測されていない。こうした課題に対して、有識者会議では残念ながら十分に議論されずに、解決されないまま報告書を取りまとめられた。」

川勝知事は国の有識者会議での報告書を踏まえて、県の専門部会で改めて議論する方針を示しています。

今回、川勝知事との意見交換の場は設けられませんでしたが、国交省の村田茂樹鉄道局長は、「今後、機会があれば検討したい」としました。

環境問題をめぐり、川勝知事と静岡市の難波市長の“考え”が一致する中、静岡県全体が「一枚岩」となって国やJR東海と話し合いができるのでしょうか。

© 静岡朝日テレビ