[社説]自民刷新の中間報告 これで改革できるのか

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、党の政治刷新本部が党改革の中間報告を了承した。焦点となっていた派閥の在り方については全面廃止に踏み込まず、政策集団として存続することを容認した。「金と人事」からは切り離すとしているが、実効性が伴っておらず、実態は骨抜きである。

 会計責任者らが立件された安倍、二階、岸田の3派は解散を決めた一方で、首相を支えてきた麻生太郞副総裁は、麻生派の解散に難色を示している。茂木、森山の2派は中間報告を踏まえて判断するとしており、政策集団の容認は党内への配慮が色濃い。

 自民党はこれまで、派閥の解消を決めても実現できなかったり、政策集団の名で活動を再開したりしてきた。政策集団に衣替えしようとも、事実上の派閥として集団化することは十分に予想できる。

 また中間報告は政治資金パーティーを全面的に禁止したほか、閣僚人事などの推薦名簿の作成、働きかけも禁止した。ただ党幹部が資金提供したり、人事を巡る水面下の働きかけを監視したりする仕組みが担保されているとは言い難い。

 派閥は、本来の政策研究や人材育成の目的から外れ、カネやポストを求める場にもなった。そこで生まれたパーティー券収入を還流させる慣習は、いつどのような経緯でつくられ、裏金は何に使われてきたのか。中間報告からは問題を解明しようとする姿勢は感じ取れず、政治不信を募らせている国民の疑問には答えられていない。

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 中間報告には、議員や会計責任者が逮捕、起訴された場合の対処を厳格化することが明記された。しかし、もはや党の自主的な運用に任せるわけにはいかない。

 リクルート事件を踏まえ、1989年に自民党が策定した「政治改革大綱」は、党三役や閣僚の在任中の派閥離脱を挙げた。しかしいつの間にかないがしろにされ、今回の問題が発覚するまで岸田文雄首相が会長にとどまっていた。

 萩生田光一前政調会長は会見で、収支報告書に不記載だったパーティー券収入の総額が5年間で2728万円に上ることを明らかにしたが、資金を管理していたのは事務所のスタッフで、使途は国会議員や外国要人との会食などの政治活動だったとして、離党や議員辞職を否定した。

 唯々諾々と派閥の決定に従っていた自身の責任に向き合わない態度から当事者意識を感じることはできない。

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 岸田首相は、派閥ありきの自民党から完全に脱却すると述べるとともに、解散を決めていない麻生、茂木、森山の3派には「党の新たなルールに従ってもらう」と強調した。一方で、裏金問題に関与した安倍派議員らの責任については具体的な言及を避けた。

 派閥をなくせば信頼を取り戻せると思っているなら勘違いも甚だしい。巨額の裏金づくりや不明朗な会計処理の実態を徹底的に調査して包み隠さず説明し、責任の所在を明確にすることこそが改革の一歩である。

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