安芸高田市の石丸伸二市長、敢えて注目集める発言をする理由 議会との対立で話題

議会との対立状況やSNSを使った戦略について語る広島県安芸高田市の石丸伸二市長=同市役所

 首長と議会との対立がSNS(交流サイト)で大きな話題となっている広島県安芸高田市。大手銀行出身の石丸伸二市長(41)は、歯に衣(きぬ)着せぬ発言で議会と激しい攻防を繰り広げ、X(旧ツイッター)や市のユーチューブ番組で積極的に発信している。市会に対し「感情だけで政策に反対しており、議会の体をなしていない」と批判するが、二元代表制で対立は「本来の姿」だと強調する。

 ―議会との対立が報道やSNSを通じて話題となっている。

 「二元代表制で首長と議会はアクセルとブレーキと言われるように、本来対立関係にあるもの。その役割を果たさなければ、議会の意義はない。その意味では(安芸高田市は)二元代表制が機能していると言える」

 ―昨年の9月定例会で市の決算が不認定となった際、石丸市長は「議会の正常化に努めなければ」と報道陣にコメントした。その思いは。

 「今の議会の最大会派は私のやることに反対したいだけだ。議会は理性ではなく感情で動いており、憂さを晴らしたい気持ちで(決算認定を)否決している。市民にこういう状態になっていると気づいてもらうことであり、市民の意識改革を求めている。議員の意識は簡単に変えられるものではない。市長も議員も市民が選ぶ。うまくいかなかったのなら、それは市民の選択の結果だ」

 ―議員はどのような存在であるべきか。

 「残念ながら、地方の議員も国会議員も特定の人や団体の利益のために活動している場合が多く、公私を混同している。自治体や国全体のために行動するべきだ。安芸高田市会の議員数は16人だが、一般質問では半分程度しか質問せず、(質問しない議員は)職務を果たしていない」

 ―議会との摩擦で市政が停滞しているという指摘もある。

 「確かに(道の駅への無印良品出店や副市長の人事案など)うまくいかなかったこともあるが、財政健全化の取り組みは進んでいる。鳥獣害対策など有意義な提案をする議員もおり、市政が停滞しているという認識はない」

 ―石丸市長のX(旧ツイッター)のフォロワー数は27万人超、市のユーチューブ番組の登録者は20万人を突破している。SNSを活用する狙いは何か。

 「一つは投稿を通じた政治の見える化。もう一つは、安芸高田市の生き残り戦略だ。市の人口はここ10年で約5千人減り、約2万7千人。このままでは20年後に市の機能が維持できなくなる。しかし、市に移住する人を増やすのは難しい。関係人口を増やすしかなく、そのためには知名度を上げる必要があった」

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 「議会とのやりとりは、市長としてしっかり答弁することを前提に、注目を集めるような発言を意図的にしている。使えるものは何でも使う。市長になる時、安芸高田市を有名にする目標を掲げ、達成できた。知名度が上がったことで、ふるさと納税が増え、動画の再生回数も伸び収益化に成功した」

 石丸伸二安芸高田市長の略歴と市会との対立経緯 2006年に三菱東京UFJ銀行(現三菱UFJ銀行)入行。20年の安芸高田市長選に出馬し、初当選した。同年9月、市会一般質問中の議員の居眠りをX(旧ツイッター)に投稿したことを発端に、市会側は反発を強めるようになった。21年1月に市が2人目の副市長を公募して候補者を決めたが、財政難などを理由に市会に否決された。その後も、道の駅への無印良品出店計画を巡り、改修に向けた調査設計費を専決処分したことなどに市会側が反発。工事費を削除する議員提案の予算修正案が可決されるなど、計画は進んでいない。

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