別府市の運転手不足解消策、県外から2人移住 反響に手応え、待遇などで課題も【大分県】

スーツケースを引く観光客が行き交うJR別府駅前。観光客の増加により、運転手不足が深刻になっている=別府市田の湯町

 【別府】タクシーとバスの運転手不足解消を目指して別府市が導入した移住支援策を活用し、県外から男性2人が移住した。現在、タクシー運転手として働いている。移住希望者からの問い合わせは150件に上り、市は反響の大きさに手応えを感じている。一方で、都市部との待遇面の差など課題も出ている。

 市は2023年7月に支援策を導入した。対象は市内のタクシー、バス事業者に就職する1970~85年度生まれの県外在住者。1世帯100万円(単身者は60万円)を支援する。12歳までの子どもがいる場合、1人当たり首都圏は100万円、それ以外の地域は30万円を加算(最大3人まで)。免許を持っていない人には取得にかかる費用の一部も助成する。

 市政策企画課によると、申請はこれまでに7人からあった。このうち2人が事業者の採用試験に受かり、移住。いずれも昨年12月に勤務をスタートした。さらに1人も内定を受け、24年度から働く予定。

 神奈川県から移住した男性(47)は過去に1年ほどタクシー会社で働いた経験がある。市内に旅行で訪れたことがあり、自然環境に魅力を感じた。移住を決意し、市について調べていた中で事業の存在を知ったという。「新しい生活に慣れない中、支援金はありがたい」

 市への問い合わせは23日現在、152人からあった。ただ、対象に当たる世代は64人で、過半数が60、70代だった。給与や住環境が希望に合わず、申請に至らない場合も多かった。

 市は「待遇の改善は大きな課題」と認識しており、申請者から寄せられた意見は事業者に伝えている。市内のあるタクシー事業者は「歩合給のため、大都市と隔たりが生じるのは仕方ない」と打ち明ける。

 市によると、一部の事業者は待遇の見直しに前向きな姿勢を見せているという。「事業者とのコミュニケーションが増え、課題意識を共有できるようになったことは進歩」と話す。

 事業者からは60代など年齢の高い世代まで対象にするよう求める声もある。市は「長く働いてもらえる世代を対象とする方針を変えることはない」との考えを示している。

 23年度の申請は今月末に締め切る。24年度以降は業種をタクシーとバス以外にも広げる方向で調整している。市は「本年度浮かんだ課題を洗い出し、今後の交通対策に生かしていきたい」と話している。

<メモ>

 九州運輸局旅客第二課によると、県内のタクシー運転手の数は1768人(2022年度)。10年間で約4割減少した。市内で路線バスを運行している大分交通と亀の井バスによると、運転手は2社で計約20人不足している。

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