条約発効から3年

 〈舎(しゃ)を道傍(どうぼう)に作れば三年にして成らず〉という少し難しいことわざがある。道端に家を建てようとすると、通行人があれこれと思い思いに口出しして、いつまでたっても完成しない-という意味で、出典は中国の歴史書「後漢書」▲中学や高校の3年間は、あっという間に過ぎてしまう気もするが、ことわざや警句の「三年」は「ある程度長い時間」を指すことが多い。〈天井三日底三年〉は、高値の期間はすぐに終わるが、低迷期は長く続く…と教える相場格言▲こちらの「3年」はどんな時間だったか。核兵器の開発・使用・威嚇を違法化した核兵器禁止条約が発効して3年が過ぎた。〈参加する国・地域の数は70となったが、広がりには陰りが〉と昨日の記事にある▲朝が来たよ、と世界が呼んでいるのに布団をかぶって耳を塞いでいる-と、この条約に対する日本政府の姿勢を発効の翌日に書いた。「条約は実効性に欠ける」と言い張る態度は3年たっても1ミリも変わらない▲ちなみに〈舎を道傍に…〉は、周囲の意見を聞いているばかりでは物事は進まない、トップには決断が必要だ-と促す教えなのだが▲“被爆地・広島出身の首相”に期待を寄せた日もあった。「首相の指導力」と書いて“無い物ねだり”と読みそうな今を思う。ため息しか出ない。(智)

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