社説:自民「派閥」存続 小手先でごまかすのか

 自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件を受け、党政治刷新本部が改革に向けた中間報告案を示した。カネとポストの配分という派閥機能からの決別を掲げたものの、「政策集団」として議員グループの存続は容認するという。

 これにより、岸田文雄首相は「(解散しない派閥も)派閥ではなくなる」と語ったが、小手先のごまかしにしか聞こえない。国民に通用すると思っているのだろうか。

 政策集団による政治資金パーティー開催や閣僚人事などの働き掛けは禁じるとし、政治資金規正法違反が判明した場合、党が審査した上で解散や活動休止を要求する仕組みを導入するとしている。

 論点をずらしてはならない。問われているのは、カネを権力の源泉とする政治の悪弊そのものを解消できるかである。

 それにはまず、党の責任で裏金の実態と使い道を解明し、反省と改善点を明らかにすることが欠かせない。

 議員と秘書、3派閥の会計責任者の計10人が立件されたが、国民の不信は幾重にも渦巻いている。

 立件を見送られた安倍派幹部らは会見や文書で裏金の総額を示す程度で、秘書任せだったと釈明したり、詳細な使途の説明を避けたりと、責任逃れが目に余る。

 政治資金規正法を改正して透明性を向上させねばならない。中間案では収支報告書のオンライン提出などを盛り込むが、生ぬるい。

 連座制を含む政治家への罰則強化は不可欠である。党から議員に渡して実質自由に使える「政策活動費」の廃止や報告書を監査する独立機関の創設、パーティー券購入を含む企業・団体献金の全面禁止の検討など、不透明な金の流れそのものを断ち切るべきだ。

 掲げた「刷新」に程遠い内容にとどまるのは、自民総裁である首相の中途半端な姿勢に尽きよう。

 安倍、二階、岸田3派が解散を決める一方、首相が全廃に踏み込まないため、麻生、茂木両派が存続を決めて党内の不一致を招いた。自らの支持基盤である両派に手を付けないのは、保身というほかない。

 政治とカネを巡る不信が極まって自民が下野した後の1994年、党は「派閥は解消する」と打ち出し、一部派閥は事務所を閉じた。しかし、翌年には政策集団の名で復活し、政治資金の分配や党人事への関与が続いてきた。

 同じ道をたどるのではないか。また抜け穴をつくるのではないか。疑念は強まるばかりである。

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