安否不明の朝市店主から年賀状 3週間遅れで届く 奥能登で郵便業務再開

畠中さんからの年賀状を見詰める松野さん=24日午後6時15分、輪島市輪島中

  ●郵便業務も再開 

 能登半島地震で業務を休止していた奥能登の郵便局で24日、窓口での郵便物や小包の引き渡しが再開された。被災した住民が約3週間遅れで年賀状を受け取り、「地震で正月どころではなかったが、こうして届くとやっぱりうれしい」と目を細めた。中には安否不明のままの知り合いからの1枚を手にした男性も。「どうしてこんなことになったのか」と元日を襲った大きな揺れに恨み節を漏らした。

 輪島市河井町のすし店店主松野克樹さん(57)はこの日、避難生活を送る輪島中で1枚の年賀状を見詰めていた。送り主は朝市通りで金物や建材を扱う店を営む畠中雅樹さん(62)=河井町。母親の三千代さん(86)とともに安否不明リストに名前が掲載されている。

 松野さんの妻久美さん(52)が輪島郵便局で受け取ってきた郵便物の中に畠中さんからの年賀状があった。近所の店同士、青年会議所時代からの仲。年下ながら「はたちゃん」と呼んで一緒にボーイスカウトの世話などに励んだ。

 畠中さんからの年賀状には紅白の梅があしらわれ、いつものように「皆様のご健康とご多幸をお祈り申し上げます」とのメッセージが添えられていた。

 松野さんは「惨状を見たら、悲しさが込み上げてくるから、なるべく朝市通りには近づかないようにしていた。年賀状を手にすると、どうしても元気だった姿を思い出してしまう」と涙ぐんだ。

  ●珠洲には十数人が列

 24日に郵便物の受け取りが再開されたのは、珠洲のほか、輪島市の輪島、門前、穴水町の穴水、能登町の能都(宇出津港いさやか広場)、松波、柳田の各郵便局。運転免許証や保険証などが必要で、穴水は前日までにコールセンターに連絡するよう求めている。自宅などへの配達は引き続き休止する。

 珠洲郵便局では、午前9時の営業開始前から十数人が列をつくった。

 珠洲市上戸町北方の女性(71)は「命の恩人」と呼ぶ人からの年賀状を受け取った。15年ほど前に乳がんを治療した際の担当医で、震災後に連絡は取っておらず「先生には『これからも頑張りますよ』と思いを伝えたい」と話した。

 能登町の能都郵便局は隣接する崖の土砂が崩落した影響で局舎が使えず、トラックを改造した「車両型郵便局」を宇出津港いやさか広場を臨時窓口とした。

 同町本木(ほんき)の中原映子さん(64)は「本来届くべき郵便物も手元にそろって日常生活が戻ってきたような気がする」と語った。

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