[社説]大浦湾 海上ヤード 環境保全に尽きぬ懸念

 名護市辺野古の新基地建設に伴い、沖縄防衛局は年明けの10日から、大浦湾側で海上ヤード(資材置き場)の造成工事に着手した。

 その工事を巡って県と国の見解が真っ向から対立している。

 県は23日、海上ヤードの工事も環境保全対策に関する事前協議の対象になると防衛局に文書で通知した。

 協議が調うまで工事を中止するよう求めている。

 2013年、仲井真県政の下で埋め立てを承認した際、環境保全対策の徹底を求める留意事項が付されており、それを根拠にしている。

 これに対し防衛局は、新基地完成後に撤去する海上ヤードは仮設構造物であり、13年時点の設計概要にも記載されていないと指摘。事前協議の対象外だと主張する。

 そもそも海上ヤードとはどのような構造物なのだろうか。

 海上ヤードは埋め立て予定区域から離れた場所に大量の石材を投入して建設される。面積約4万3千平方メートル。

 完成後は「ケーソン」と呼ばれるコンクリート製の護岸建設資材の仮置き場になる。 造成に2年半かかるというから、それだけでも巨大な構造物であることが分かる。

 仕様書によると、石材は産地を明示し、洗浄して使うことになっている。

 石材を海に投下するたびに粉じんが巻き上がり、海が白濁するのを見ると、十分に洗浄されているかどうか疑問が湧く。

 環境保全対策をないがしろにしてはならない。

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 「工期は9年3カ月。本日の工事着手がこの起点にあたる」

 林芳正官房長官は、10日の記者会見でそう説明した。

 海上ヤードの工事が、大浦湾での軟弱地盤改良・埋め立て工事の始まりだとの認識を示したのである。海上ヤード工事と軟弱地盤改良工事は一体という考え方だ。

 公有水面埋立法も、県が埋め立てを承認した際の留意事項も、環境保全対策を強く求めている。

 仮設構造物だからといって海上ヤード造成工事を事前協議の対象から外すのは、工事の規模の大きさからしても説得力に欠ける。

 前のめりになって工事を進めるのは環境対策面からもかなり問題がある。

 米軍の意を体して埋め立て事業を進める政府は、環境への負荷を低く見積もりがちだ。問題があっても問題があるとは言わない。

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 県はこれまで、再三にわたって対話による解決を主張し、協議を求めてきた。

 国は何かと理由を付けて県との協議を避け、ひたすら工事を強行し続けてきた。

 地方分権改革で示された国と地方の「対等・協力」の関係は、代執行によってもろくも崩れ去った。

 保護に万全を期すことが留意事項に盛り込まれたジュゴンは、どこへ行ってしまったのか。

 国に任せっ切りでは海の環境は守れない。自治体や自然保護団体、市民の監視と提言が欠かせない。

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