サーチファンドを活用した事業承継が過去最多を更新「白書」で明らかに

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経営者を志す個人(サーチャー)を支援するサーチファンドを活用した事業承継の件数が、2023年に過去最多となった。

Growthix Investment(グロウシックス・インベストメント、東京都中央区)が、サーチファンドを活用したM&A案件をまとめた「サーチファンド白書2023」によると、2023年にサーチファンドを活用して事業承継を行った件数が9件となり、これまで最多だった2020年と2022年の5件を上回った。

帝国データバンクが2023年11月に、全国の全業種約27万社を対象に行った調査によると、後継者問題は改善傾向にあるものの、依然として半数以上(53.9%)の企業が後継者難の状態にある。

後継者不在企業の事業承継の一つの選択肢として、サーチファンドを活用する仕組みが徐々に存在感を増していきそうだ。

譲渡も実現

「サーチファンド白書2023」によると、サーチファンドを活用した事業承継が実現したのは、プライズゲーム(景品を獲得することを目的としたアーケードゲーム)向けに景品の卸売事業を手がけるアレスカンパニー(千葉県松戸市)や、住宅設計、施工、販売のフレスコ(千葉市)、農業関連の三笠産業(山口市)、ゴルフシュミレーター販売代理店のディオントーキョー(東京都新宿区)、エアコン部品製造の鹿島精機工業(神戸市)。

さらに給排水設備工事の菊地設備工業(栃木県宇都宮市)と同業のパイプマン(福島県いわき市)、化粧品などの受託生産のコスメプロ(奈良県吉野町)と化粧品販売のオリエンタルコスメチック(東京都中央区)、業務用厨房機器の開発、販売のネクスト(埼玉県上尾市)の8件と、情報非公表1件を合わせた合計9件。

また、2023年はサーチファンドを活用した事業承継(サーチファンドによる投資)とともに、譲渡も実現した。

2023年2月にサーチファンド・ジャパンが投資したアレスカンパニーを、アミューズメント施設「GiGO」を運営するGENDA<9166>が2023年10月に買収した。

GENDAが持つ景品の選定力と、アレスカンパニーの調達網を組み合わせることで、より魅力的なアミューズメント施設づくりを目指すという。

専門業者以外の参入も

同白書は2023年に、4月1日が「サーチファンド誕生の日」に制定されたのを機に、Growthix Investmentが公開されている情報を基に作成しており、今回が2022年版に次ぐ2回目の発行となる。

Growthix Investmentでは2023年は金融機関やM&A仲介会社などによるサーチファンドへの理解が進み、サーチファンドの活用が広まったことで件数が増加したと分析したうえで、「2024年はこれまでの金融機関やM&A仲介業者といった専門業者以外の会社がサーチファンド事業に参入することが考えられる」とし、サーチファンドの裾野が一段と広がると予想している。

文:M&A Online

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