「避難につながらないと意味がない」専門家が警鐘…実は身近な“高潮”のリスク 相次ぐ大波に冠水被害

台風などの際に起こる「高潮」のリスクについて検討する会議が静岡県庁で開かれました。県は沿岸部の浸水想定区域の検討を急いでいます。

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まるで津波のように押し寄せる大波。2017年の台風で静岡市清水区の由比漁港は大きな被害を受けました。

<記者リポート>
「静岡市駿河区の西島です。降り続いた雨で道路は冠水してしまっています」

高潮で地域一帯が浸水したこともありました。これらすべての被害は高潮が原因です。この高潮への備えを強化するための検討会が1月25日、静岡県庁で開かれました。

<出席した専門家>
「住民に分かりやすく説明するかが大事。最悪の条件でこうなることを説明して、避難行動に移してもらうことになるから、避難につながらないと意味がない」

危機感を高めているのは海岸工学や気象の専門家たち。命を守る対策につなげようと想定しうる最大規模の高潮による浸水想定区域を策定しています。

能登半島地震では津波が発生し、沿岸部は壊滅的な被害を受けましたが、この津波と高潮は似て非なるものです。

<田中健太郎気象予報士>
「津波は地震によって海底の地盤が盛り上がったりして、海の底から表面まで水が塊となって押し寄せる現象です。高潮は台風などの影響により水が上へ吸い上げられたり海岸付近の潮位が高くなる現象です」

高潮は海水面の変化が特徴です。気圧の低い台風などは空気が海面を吸い上げるように作用するため、通常よりも海面が上昇します。また、強い風が海岸に向かって吹くため吹き寄せ効果でさらに海面が上昇。そして、大きな波が絶え間なく押し寄せると潮位そのものが災害をもたらすことになります。

<小林哲郎記者>
「静岡市清水区の巴川河口です。想定しうる最大規模の高潮ではおよそ1メートル50センチほどの浸水が見込まれています」

この施設では、2019年と2022年の台風で高潮による被害が続きました。静岡地方気象台によりますと、2023年1年間で高潮注意報の発表は68回。津波よりも圧倒的に頻度の高い現象のため、その脅威を知ることが大切です。

<高知工科大学 佐藤槇司教授>
「今回の委員会ではすべての地域で網羅的に検討していただき、最悪レベルに対応しているので活用していただければ」

静岡県は、県内すべての浸水想定区域を公表した後、住民が避難する条件などを整理していく方針です。

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