能登半島地震で住宅の耐震化に関する相談が急増するが古い住宅に住む高齢者には厳しい現実が

最大震度7を観測した能登半島地震では多くの木造住宅が倒壊しました。震災をきっかけに県内でも耐震化への関心が高まっているようです。

能登半島地震から25日が経ったものの、いまだ全容が見えない建物被害。

木造住宅を中心に倒壊が相次ぎ、25日時点で、石川県の建物被害は4万棟を超えています。

もし静岡県で大地震が発生した場合、「自分の家は大丈夫なのか?」と頭をよぎった人も多いのではないでしょうか。

実際に、県内では…。

建築士:
「瓦はそのままですか?」

住民
「そのままです。直したところはひとつもない」

和田佳代子記者:
「築49年になるこちらの家では大規模な地震に対して、耐震性がどれくらいあるのか確認する調査が行われている」

築49年の木造2階建て。

静岡市清水区に夫婦2人で住んでいる鍋田さんです。

鍋田正夫さん(77歳):
「このハガキが来ました。静岡市役所から。無料耐震診断だけならオッケーですよ、と軽く返事をしたら…」

去年12月、市役所から自宅に届いた一枚のハガキ。

無料の耐震診断の申し込み用紙でした。

無料ならやってもらおうと、軽い気持ちですぐに申し込みをしたところ、元日に能登半島地震が発生。

テレビで目にした被災地の木造住宅の姿に、一気に他人ごとではなくなったといいます。

鍋田正夫さん(77歳)
「あの地震にはびっくりした。こっちもあんな地震が来たら…。大変だと思いますから」

そしてきょう、静岡市から依頼を受けた建築士が耐震の調査に来たのです。

池ヶ谷一級建築士事務所 池ヶ谷紀行さん:
「はい、大丈夫ですね。基礎は… うんいいね」

鍋田正夫さん
「ここがちょっと気になりますね」

池ヶ谷一級建築士事務所 池ヶ谷紀行さん
「2階にかかっちゃうね」

補強工事の有無などを聞き取りしながら、基礎や外壁などの劣化具合を調べます。

このような無料の耐震診断は、静岡県と自治体が連携した木造住宅の耐震化プロジェクト「TOUKAI-0(トウカイゼロ)」の一環で、2001年から行っています。

能登半島地震がきっかけで、県の窓口に問い合わせが急増しているといいます。

県建築安全推進課 鈴木貴博課長
「県内の市町から補助金の関係についての問い合わせが来ているし、(住民から)市町の窓口に(耐震に関する)相談が増えているのは聞いている。今回の能登半島地震の報道を見て、皆さん防災意識がかなり向上してきている」

県は2001年の開始から県内全域で9万戸以上を診断してきました。

ただし、対象は1981年5月以前に建てられた木造住宅となります。

県建築安全推進課 鈴木貴博課長
「今、残っている(耐震化していない)方は何らかの課題を持っている方で、なかなか耐震化に踏み切れていないと思っているので、そういった方にぜひ耐震診断をやっていただきたい」

池ヶ谷一級建築士事務所 池ヶ谷紀行さん:
「奥さん、床下収納庫はありませんか?」

鍋田さんの妻:
「ないです」

1975年に建てられた鍋田さんのお宅。

26日家の隅々まで診断を行い、1週間後をめどに
正式な診断結果が届くということです。

ただ、結果については厳しい見立てが…。

池ヶ谷一級建築士事務所 池ヶ谷紀行さん:
「この診断の基準になっている元の法律が平成20年(2000年)の法改正が基準になっているものが多く、(この家は)昭和50年の建設から50年近く経っているので、その間に大きな地震がいくつかあったので、その間に法改正が何度かされていて、かなり厳しい診断になる。たぶん合格するのがあまりない。この無料診断をして1.0以上(合格点)になるというのは、僕がやった経験上はあまりない」

そもそも、50年前に家を建てたときとは現在の耐震基準が異なるため、鍋田さんの家も、新基準では不合格になる可能性が高いといいます。

不合格になった場合は、補強工事や建て替えなどを
国や県などの助成金で行うことができますが…。

鍋田正夫さん(77歳)
「高齢者だから、あと何年生きられるか…。(結果を見て)ちょっとこれから考えたいと思う」

今後のことを見据えると、耐震化すべきか迷っているといいます。

とはいえ、現在の家の状況を把握できたことは前向きに捉えています。

鍋田正夫さん(77歳)
「ちゃんと調べてもらって、なんか安心した。これから(耐震化を)やるやらないは別としていい経験をしたと思う」

© 静岡朝日テレビ