薬物注入「1分もかかってない」 錠剤溶かし液状にして持ち込む ALS嘱託殺人公判・被告医師

京都地裁

 難病の筋萎縮性側索硬化症(ALS)を患う女性から依頼され、薬物を投与して殺害したとして、嘱託殺人などの罪に問われた医師大久保愉一(よしかず)被告(45)の裁判員裁判の第7回公判が26日、京都地裁(川上宏裁判長)であった。被告人質問で大久保被告は、女性への薬物注入に要した時間について「1分もかかっていない」と明かした。

 大久保被告は女性の自宅で、胃にチューブで栄養を送る「胃ろう」から薬物を投与したとされ、滞在したのは15分ほどだったとみられている。

 検察側の被告人質問で、大久保被告はあらかじめ錠剤を溶かし液状にして持ち込んだとし、取り出せばすぐに注入できる状態だったと述べた。胃ろうへの注入は「ガソリンスタンドでガソリンを入れるようなもの」と表現。時間は1分もかからなかったとした。

 一方、訪問時にヘルパーに偽名を書いたメモ帳を渡したことについて、「(事件の)発覚が遅くなればいいと思った」と語った。共犯とされる元医師の山本直樹被告(46)を名乗って女性と接触していた点は、「法律に触れるような場面では本名を使いたくない」と説明した。

 弁護側からの質問では、事件前の女性とのやりとりに触れ、「女性から主治医になることを求められ、それに応えようとした」と回答。女性は、実際の主治医に転院するための紹介状の作成を断られており、「SNS(交流サイト)で助けを求めることぐらいしかできなかった」と振り返った。

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