宇奈月到着、安堵の表情 輪島から2次避難58人

輪島から宇奈月温泉に到着した避難者=26日午後7時15分、黒部市宇奈月のホテル

 能登半島地震で甚大な被害を受けた輪島市の被災者58人が26日夜、広域避難で黒部市宇奈月温泉の宿泊施設に到着した。輪島市の避難所などで地震後、同日まで過ごしてきた人たちで、温泉を備えたホテルで受け付けを済ませ、「やっと風呂に入れる」「ゆっくり眠ることができる」と安堵(あんど)の表情を浮かべた。一方で、「これから先のことは見当も付かない。白紙だ」と生活再建にはまだ考えが及ばない不安も漏らした。

 石川県から富山県を通じて要請があった避難者の受け入れで、石川県が2次避難所として登録している湯快リゾート宇奈月グランドホテルに午後7時過ぎに入った。2次避難所に移ることを希望した輪島市内各地の人で、石川県の調整により宇奈月に避難先が決まった被災者となる。

 26日昼には輪島を出発、金沢市のいしかわ総合スポーツセンターで健康チェックを受けた後、バス2台と自家用車で着き、黒部市職員が「おつかれさまでした」と声を掛け、受け付けに誘導した。

 武隈義一市長も防災ビブスを身に着けて出迎え、高齢の人の荷物を運ぶなどして気遣った。ホテル側は25室を用意、2~4人ずつ家族単位で過ごす。滞在期間は未定で、市は健康管理や生活物資の提供などを通じてサポートしていく。

 輪島塗関係の会社に事務員として勤める平幸絵さん(63)は「やっと落ち着ける。風呂に入れることがうれしい」とほっとした様子だった。長男と輪島塗職人の夫と共にマイカーで到着した。「今はとにかく休みたい。輪島の仮設住宅に入れれば、これからの生活について考えていきたい」と今後を見据えた。

 輪島塗職人の坂本雅彦さん(65)は「輪島での仕事は生きがい。時間はかかるかもしれないが、戻って働きたい」と語った。蒔絵職人の妻、長男と避難してきた。スマートフォンに保存してある仕事場や仲間の写真を眺めながら、「妻と息子が落ちついたら輪島とここを行き来しながら、職場や自宅の片付けをしたい」とふるさとを気にかけた。

 武隈市長は「それぞれに疲労の度合いも違い、幅広い年代層の人がいる。個々の事情に寄り添って対応していきたい」と話した。

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