〈1.1大震災〉コロナ感染の被災者死亡 珠洲の87歳女性

新型コロナに感染後、死亡した女性が身を寄せていた避難所=22日午後6時15分、珠洲市飯田小

  ●地震後初めて確認、金沢で判明

 能登半島地震の被災者で、新型コロナウイルスに感染した珠洲市若山町の比古咲(ひこさき)きみ子さん(87)が16日に亡くなっていたことが分かった。1日の地震後、コロナに感染した被災者の死亡が確認されるのは初めてで、災害関連死の可能性がある。避難所ではコロナやインフルエンザが拡大しており、専門家は対策の徹底を呼び掛けている。

  ●入院前は避難所で生活

 比古咲さんの長男孝さん(59)によると、比古咲さんは地震後、避難所の珠洲市飯田小に身を寄せていた。肝臓に持病があり、7日に治療のため金沢市内の病院を受診したところ、新型コロナの陽性と診断されて専用病棟に移った。その後、高熱を出すなどし、9日後に息を引き取った。

 比古咲さんが入院直前まで過ごしていた飯田小は21日時点で107人が避難生活を送り、同日までに計12人のコロナ感染が確認された。陽性の住民は別室に隔離し、トイレ、食事も別にして他の避難者と接触がないようにしていた。

 現在、感染者以外の避難者が過ごすスペースに間仕切りはないが、来週以降は屋内にテントを設営するなどして対策を強化する。避難所運営の責任者を務める泉谷信七さん(73)=珠洲市飯田町=は「日赤の助言を受けて対策に当たっている。コロナの感染者は出ているが、拡大はしておらず、しっかり対応していきたい」と語った。

 孝さんは「他の避難所に比べて手厚い感染症対策をしてくれたと思っており、関係者には感謝している」と語った。

  ●「ひ孫の顔見よう」かなわず

 亡くなった比古咲きみ子さんは、地震が発生した1日、ひ孫らと一緒に雑煮を食べるなどして家族団らんを楽しんでいた。昨年12月には孫の結婚式に出席し「次は新しいひ孫の顔を見よう」と話していたが、かなわなかった。

 孝さんによると、きみ子さんは家族全員がノロウイルスに感染した時もただ1人無事だった「最強ばあちゃん」で、コロナの感染が判明した際も「おれに近づくな」と冗談を飛ばすほど元気だった。

 孝さんは「あれが最後の会話になってしまったが、母には『よう生きてくれた』と声をかけてあげたい」と語った。

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