植林地の苗木も被害 シカ対策の切り札になるか 県がシカを捕獲する新技術の勉強会 広島

シカによる農作物被害が深刻ですが、被害は山の中の植林地にも広がり、林業にも影響が出ています。こうした中、広島県は植林地のそばでシカを効果的に捕獲するマニュアルを作りました。対策の切り札となるのか?先日、初めての研修会がありました。

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世羅郡森林組合 向井久宣 課長
「シカの被害、特に本当に困ってるので。何かいい手立てはないかと思って」

広島県が開いた研修会には市・町の林業関係者ら20人あまりが参加しました。その目当てがシカを捕まえる新しい技術「水際捕獲」です。

県が業者に委託して行った実証試験で3年前、注目の結果が出ていました。

広島県林業課 小谷美紀 担当監
「1か月で31頭のシカ捕獲すると、その後の3か月間シカの被害がその施業地ではなかったと。とても効果があると思っております」

シカの被害を受けやすいのは植林地に植えたヒノキなどの苗木です。狩猟の場合、山の中に潜むシカの居所を突き止めて行います。これに対して「水際捕獲」は植林地のそばにエサ場を作り、シカをおびき寄せ餌付けします。餌付けが出来たタイミングでくくりわなを設置、エサを食べに来たシカを捕まえます。

県では、その後も試験を行って2023年3月、捕獲マニュアルを作成、今回の研修会となりました。

実習は、安芸高田市吉田町のヒノキの植林地で行われました。実はここ、3年前、実証試験を行った同じ場所です。

安芸北森林組合 上小田昌平 課長
「ここはすごくシカの多いとこなんで、どんな感じなのか見させてもらいたいなと思っています」

講師は、実証試験を請け負った業者です。手に持ったのはシカの好物という牧草を固めたエサです。

講師 BO-GA 市川哲生 専務
「始めの頃は、こうやってパラパラってまいておく、ここで食ったらうめえな!となったとしたら、見渡したら、おっここにあるじゃないか!と来てくれるっていうストーリーです」

講師は◇エサやりは1~2週間以上続ける。◇餌付けできたらくくりわなを設置すると、手順を説明しました。

講師 BO-GA 市川哲生 専務
「踏んでも大丈夫です」
参加者
「あー痛い」
市川哲生 専務
「痛いですか」

くくりわなについては詳しく使い方を指導しました。これまで植林地の獣害対策は防護柵を張るだけで、捕獲は猟友会頼みでした。

柴田和広 記者
「3年前の実証試験のときは、このヒノキの植林地の周り700メートルに30カ所のエサ場を作って、シカの餌付けをしたそうです。1か月間31頭の捕獲のかげでは30カ所のエサを1か月間、毎日、新しくする努力があったということです」

講師 BO-GA市川哲生 専務
「エサでおびき寄せて、そこは手間をかけるんですけど。人間の都合のいいところでエサでおびき寄せることで、安全性とか効率性を増すことができる。狩猟者さんだけに依存するんじゃない、新しい捕獲技術じゃないかなと思います」

参加者の1人は「いいやり方だと分かった。しかし、費用や労力の問題もある。導入については持ち帰って検討したい」と話していました。

広島県では今後もこうした研修会を開き、普及を図る考えです。

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広島県の一昨年度のアンケート調査によると、5年以内に苗木を植えた植林地の約3割が野生動物の被害を受けていて、このうちヒノキの被害の7割はシカによるもの。シカ対策が急がれます。この「水際捕獲」は一部、農業分野にも導入されていて、北広島町と安芸高田市との境界区域で行ったところ、かなりの頭数を捕獲したという報告もあります。効果のある捕獲方法といえますが、その餌代の費用と人手をどこから捻出するかが課題となっています。

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